SAGA PLANETSの四季シリーズの物語構造解析から

最近はつゆきさくらに代表されるSAGA PLANETSの四季シリーズを遊びました。

遊びながら、このシリーズのストーリーはギャルゲの王道的な鉄則に基づいて作られていると感じましてそのあたりを考察してみたいと思います。

王道的な鉄則が悪いとか古いとかそういうことを言いたいわけではありません。むしろTRPGでシナリオを作るときなどを念頭に置いて、そうした王道を生かすためには何に気をつけなければならないのかなどを考えていきたいと思います。

以下、はつゆきさくら、キサラギGOLD★STAR、ナツユメナギサの非常に身も蓋もないネタバレが含まれますのでご注意ください。


さて、僕が”王道”と称したのはどういう物語構造かと言いますと、ヒーロー(ヒロイン)がヒロイン(ヒーロー)と別れて成長するという構造です。

ナツユメナギサは以下のような話です。長い幼馴染期間を経て恋人に至った渚と歩でしたが、渚が海難事故に合い、残された歩は他の人々を巻き添えに夢の世界に逃避してしまいます。主人公は歩と渚に助けられたペンギンですが、ペンギンが夢の世界では渚となって人々の心の疵を埋め、現実世界に返していき、最後は歩も現実世界に返すという話です。歩の視点に立てば渚を失って、成長する話とみることができます。

一方はつゆきさくらはこんな話です。幼いころホテルの爆発事故にあった初雪は父親に洗脳され、その復讐の道具となり、高校卒業と同時期にあるパレードでのテロを企てています。その一方同じく事故にあった桜はゴーストととして現れて初雪と楽しく生活します。最終的に桜は消えてしまいますが、桜の願いは初雪が幸せになることで、初雪はその思いを尊重してテロを止め卒業します。

この2つの話に共通するのは喪失された親しい人の思いを尊重して、その喪失を乗り越えるという構図です。上で”ヒーロー(ヒロイン)がヒロイン(ヒーロー)と別れて成長する”と書きましたが、成長するというよりも困難に打つ勝って幸せに生きていくと言ったほうが良かったかもしれません。

キサラギGOLD★STARは前の2つとは少々違います。この話の登場人物は月から来たサヤと、主人公の二見、そしてその仲間たちです。二見には宇宙飛行士になるという夢がありますが、父親の事故やそれに対する母親の態度などで思い悩み、サヤが魔法的な力でいったん夢を忘れさせます。サヤが月に帰る期限が近づいたころ、友人たちのちからで元気になった二見にはもう魔法はいらないということで夢を取り戻します。その後サヤは月の世界の人々を幸せにするために月に帰りますが、二見はいつか迎えにいくといい別れます。

一見サヤを喪失して二見が成長している話のようなのですが、実は前の2つとは状況が違っています。喪失してから成長しているのではなく、成長しているから(一時の)喪失に耐えられるのです。

これを踏まえるとふと思うのは、ここで喪失される人がでるのは必然なのだろうかということです。ギャルゲにおいて最後にヒロインと幸せにならないというのは、一見矛盾しているように思います。単に困難に打ち勝って生きていく力を得るだけなら実は喪失はいらないのではないでしょうか。二人でハッピーエンドで良いじゃんという気もします。たぶんここで重要なのは喪失されたものの遺志は何年たっても変わらないということなのかもしれません。逆に言えば簡単には変わらないほどの決意を手に入れられるなら喪失がなくても良いのかもしれません。ヒーローとヒロインで困難を乗り越えるタイプの場合はうまくいきそうです。

あまりまとまりがよくありませんが、考えたことのメモということで、こんなところにしておきます。