図式で理解する!〜リトルバスターズ感想&考察のまとめ〜
9日にわたってリトバス日記を書いてきましたがそのまとめをします。各日の感想はこちらから。
共通ルートとミニゲーム→クドルート→美魚ルート→小毬ルート→来ヶ谷ルート→葉留佳ルート→来ヶ谷ルート→鈴ルート→リフレイン
さて、本作の感想を書くにあたって、とりあえず抑えなくてはいえないのは他者とのつながりにより成熟する話の基本構造です*1。ONEを知っている人はONEを思い浮かべるのが早いでしょう。登場人物は以下。
成長する人 : 成長できない場合は永遠の場所とかへ行ってしまって帰ってこれない。 子供性担当者 : 永遠の場所へ誘ったりする。この人とオサラバすることが成長。 現実へ引き止める人 : 成長する人を現実側にとどめる要となる人。
この3人の綱引きが図式化された成熟話の基本です。各ヒロインの話はこの図式の中で登場人物の立ち位置がちょっとずつ違うって感じですね。
ONEルート
成長する人 : 主人公 子供性担当者 : 主人公の妹 現実へ引き止める人 : ヒロイン
参考までにONEの構図を。
〜さてここから先はネタバレなので隠しておきますよ!〜
小毬ルート→感想
成長する人 : 小毬 子供性担当者 : 小毬のにいちゃん 現実へ引き止める人 : 理樹
これはかなりまんまな展開ですね。おにいちゃんの喪失を受け入れて現実を見させるお話です。ONEと違って主人公が現実に引き止める側になったのが特徴といえば特徴。これは自分が説得されるよりある意味責任が伴いますね。
小毬の成長のために、兄ちゃんの願いを借りるところが全体的な構図の縮図となっていますね。
美魚ルート→感想
成長する人 : 美魚 子供性担当者 : 美鳥 現実へ引き止める人 : 理樹
美魚ルートの特徴は、その子供性担当者美鳥への贖罪のため、つらい現実からの逃避ではなく、美魚が積極的に現実を拒否するところです。ちょっと手ごわいですね。
これも美鳥の善意を信じることで、道がひらけます。全体の構図の縮図です。
来ヶ谷ルート→感想1→感想2
成長する人 : 来ヶ谷 子供性担当者 : 理樹(こっちがメイン) 現実へ引き止める人 : 理樹
おもしろいのはこのルート。来ヶ谷の希望でループを繰り返し、その中での恋人を演じるのは理樹です。見回してみれば分かりますが、理樹がこうして喪失される側にたつのはこのシナリオだけです。
さらに、そのループ構造に気付いてしまうのも理樹。これはおもしろい構造ですね。さらに言うなら、現実世界で待つのも理樹です。この構図の目新しさ!フィクションの素晴らしさに歓喜したシナリオでした。
でもちょっと僕の考察、あるいはシナリオのテーマ消化が足りてないかも。これで理樹が来ヶ谷に目を覚ますよう言うなら、すごいんだけどな。どっちかって言うと理樹は来ヶ谷との甘い日々を続けたかったっぽい。子供ですねw。
葉留佳ルート
葉留佳ルートは毛色が変わっていて、今までの構造では理解できません。そのあたりの困惑は、keyの作品で、姉妹の和解が登場し続けるのなんでだろ〜で語ったとおりです。
この葉留佳シナリオを僕なりに素直に解釈しますと、”自分の境遇”との和解ですね。姉を”自分が選べなかった可能性”の象徴だと見まして、それをうらやむことなく、さげすむことなく、受け入れるっていう自分の境遇に関する感受をこのシナリオではみせてくれます。これも成長には大切なことですね。
クドルート→感想
成長する人 : クド 子供性担当者 : 理樹 現実へ引き止める人 : 理樹(わりとこっち)
クドと理樹の幸せな日々を理樹の言葉で戦地に送り出すという構図がまたもやでてきます。ここで指摘して起きたいのは、クドの成長への積極性です。中間的な存在が自ら望んで生贄になるってことも成長の象徴ですね。
しかし、このシナリオ…理樹との絆で、クドが助かる奇跡が起こる展開になっているのですが、ここで理樹が助けるっていうのは自らの意思で成長しようとしたクドの失敗を理樹が助けるような構図になっちゃってますね…。どうもあんまりうまい構成ではなかったですね…。
鈴ルート→感想
これは、理樹と鈴が逃亡して、むちゃくちゃ失敗するシナリオですが、このシナリオはリフレインでの理樹の成長の柱となります。クドルートでも強調される(べき)だったように、成長には自らの意思が重要だってことですね。
リフレイン→感想
成長する人 : 理樹 子供性担当者 : リトルバスターズ
すでに理樹は、鈴シナリオで強くなろうと決意しているのです。でも決意をほんものにするために、リトルバスターズの恭介、真人、謙吾が協力します。
ここで、乗り越える対象として”父”ではなく”恭介”を持ってきたのはさすが。父を乗り越える話は現代ではなりたちにくいのです。
すでに、小毬ルートや美魚ルートで述べたとおり、子供性を担当するリトルバスターズの恭介、真人、謙吾の思いが、理樹を成長させるという図式が繰り返されます。
僕たちはこうやって理樹の成長の様子を追ってきましたが、ハッピーエンド編では鈴の成長も見えます。重に小毬を通して、鈴も成長してきたのですね。そして、keyお得意の”奇跡”を人の手によって起こすことで、お話は幕を閉じます。
今、こういうギャルゲーは下火ですよね。ラノベのほうが安いし簡単に読める。でも、こうやって同じ構造の話の繰り返しにより、いろんな立場からテーマを彩るこの構成はノベルゲームでこそやりやすいことだと思うし、この形式に可能性を感じた一作となりました。
*1:こういう話の構造分析は大塚英志の人身御供論を参考にしている。人身御供論 大塚英志 - ブレーキをかけながらアクセルを踏み込む