光輪の町、ラベンダーの少女 あかべぇそふとつぅ
- 出版社/メーカー: あかべぇそふとつぅ
- 発売日: 2010/06/24
- メディア: DVD-ROM
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前作車輪の国、向日葵の少女*1はあかべぇそふとつぅの出世作でしたから、否が応にも期待が高まった本作ですが、少々ちぐはぐさを感じた作品でした。
おはなしのまとまりとしてはわからなくはない作りなのですが、ノベルゲームとしてみたときにレベルが低いような気がします。全体の共通ルートはそれなりにおもしろいんですが個別ルートが微妙です。個別ルートに移行する前に作品としてのクライマックスを迎えてしまい、個別ルートで盛り上がりにかけるんですね。起承転結でいうなら個別ルートはエンディングみたいなものに対応してしまっていて、大きな転はないのです。
こういう構成をさけるのならば、本作の前半を同じくあかべぇそふとつぅのG線上の魔王のように共通ルート1→個別ルート分岐→共通ルート2のように処理することも可能だったと思います。とはいえネタバレを避けるためにここでは紹介できない、とあるどんでん返しをちゃんと機能させようとすると、この構造にはできなくて悩ましいところですね。よく考えるとこれはギャルゲの構造に対する問題提起にもなっているのかもしれません。
大抵のギャルゲでは女の子の抱える個別の問題を主人公が解決するというフォーマットになっています。その一方、ヒロインではなく主人公の抱える問題をシナリオ中で取り扱おうとすると、その問題を解決する”真の”シナリオ、親玉のシナリオが必要になり、メインヒロイン、サブヒロインとその扱いの軽重に違いが生じます。
現状は上で紹介した通りなのですが、今ふとアイデアが思いつきました。主人公の抱える問題に対して、女の子が個別のアプローチをするというのは面白いかもしれません。つまり、既存のギャルゲではルートと女の子の抱える問題が1対1対応をしていたのに対し、僕が今提案しているのは主人公の抱える共通の問題に対して、女の子がとる解法が個別になっているシナリオです。これはもしできたらギャルゲの新しいテンプレートになるかもしれませんね。
さて、話を本作に戻して、あともうひとつダメだししとくと、メインヒロインの桜木ヒカル編の最後は一番ひどいですね。最後の最後そんなきっかけで心変わりしちゃうのかよと思いました。鈴木はるかをメインヒロインにしたほうが一貫性のある話になったのではないでしょうか。
ダメ出しは終了として、この作品で評価しなければならないのは、ヒロイン同士の友情や交流がよく描かれていることで、これは素直に面白いと感じました。また先程述べたどんでん返しも面白かったです。あれは熱いですね。
個人的には未熟な作品のようにも感じますが、もっと練りあげるのが時間的予算的に不可能だった事情も十分ありえると思うので(内情は知りませんけど)、もっと磨きあげた次回作に期待といったところです。