素晴らしき日々 ケロQ
- 出版社/メーカー: ケロQ
- 発売日: 2010/03/26
- メディア: DVD-ROM
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素晴らしき日々~不連続存在~ 通常版、読み終わりました。少し懐かしい雰囲気をもったゲームですが、売れ線に媚びないかなりの力作。僕が最近遊んだなかでは一番価値があったゲームだと言えます。オススメです。
このゲームの価値を説明するには10年前にでた終ノ空というゲームについて語る必要があります*1 *2。素晴らしき日々は終ノ空のテーマと登場人物を引き継いだ作品だからです。
終ノ空の特徴して一番に挙がるのはまず頻繁に登場する哲学用語でしょう。ウィトゲンシュタインやニーチェなどの言葉がよく引用されています(もう10年前の話なので印象ですが)。そのあたりが衒学的な学生に受け商品としての完成度の低さのわりには記憶に残る作品として世に残っています。また、今考えれば時流にのった作品でしたね。あの頃はオウム真理教で、宗教テロの危機感がましていましたし、酒鬼薔薇の事件で狂人が突発的に日常を覆すなんて雰囲気もありました。素晴らしき日々もやはりそういった雰囲気を強く引き継いでいます。
実は僕は終ノ空をそんなに高く評価していません。難解なわりには言いたいことがはっきりしない作りになっていて、作者の迷いが見える作品だと思います(今から振り返ればですが)。しかし、本作ではテーマや雰囲気は引き継ぎながらも、テーマにぶれがなく、作者に迷いもなく、ゲーム的な企みにも富んだ作品で非常に楽しく遊ぶことができました。引用する作品が哲学から文学に変化しているのも分かりやすさに寄与しているかも。
あとは細かな部分について感想を述べていきましょう。
まず、この作品はあんまりヌケる、実用性の高い作品ではありません(たぶんみんなそこを強く求めてはないと思うのですが)。本作で出てくるイジメのシーンで何回かエロシーンがあるのですが、内容が非常に陰惨で心が折れそうになりました。読んでいるとブルーになってきて全然ヌケる感じじゃないです。ただし物語の時系列の後半でだんだん登場人物の狂気が描かれていくにあたり、その前段階としてあのような陰惨なシーンが必要なんだろうなぁとは思います。
このゲーム音楽が良いです。作品中でピアノを弾くシーンがありますが、サティのピカデリー*3と、そのあたりの選曲も良いですね。おまけモードでサウンドを聞けないのが残念です。
あと、このゲーム演出が優れています。背景も立ち絵的なものも凝っていました。特に後半の狂気に陥ったりや認識がずれていくシーンの演出が素晴らしいです。
最初のほうにもまとめましたが、売れるものを作るというより創りたいものを創るという作者の姿勢が好評価できる作品で、僕は大変おもしろいと感じました。付属の冊子にケロQが倒産しそうという話が載っていますが、こういった作品をだすメーカーを潰してはいけないと思います。もし興味をもたれた方がいましたら応援よろしくお願いします。