ソードワールドリプレイxS 猫の手冒険隊シリーズ 清松みゆき, グループSNE

猫の手冒険隊、集結!―ソード・ワールドRPGリプレイ集×S〈1〉 (富士見ドラゴンブック) 猫の手勇者くん、突撃!―ソード・ワールドRPGリプレイ集×S〈2〉 (富士見ドラゴンブック)

清松みゆきが送るシナリオ付きリプレイ。箱庭型シナリオの参考にどうぞ。

本シリーズとの出会い

このブログの読者の方は意外に思われるかもしれませんが、僕はソードワールドのリプレイを読むのは久しぶりです。ソードワールドはスチャラカやバブリーズは完結まで読んでいて、へっぽこおよびNEXTは途中までしか読んでいませんでした。

僕はTRPGリプレイに何か遊び方への示唆が入っているものが好きです。最近では矢野俊策氏のリプレイは毎回考えられていて好きですね。特にマスターの意図があとがきなどでよく説明されていて、その意図の着想とそれを実現するギミックの精密さに心惹かれます。
このリプレイxSのコンセプトを知っている人はここでピンとくるでしょう。このxSでは巻末に詳細なシナリオを添付してあり、シナリオ作成の注意点や、意図とずれたときの実プレイでの修正法などが学べます(xSのSはシナリオとか、もしくはサポートなんかを意味するらしい)。

しかし、僕はそんなことは露しらず、このリプレイも清松みゆきがマスターをしているだけの普通のリプレイだと思っていましたので、全然読もうという気が起きませんでした。そんな僕ですが、以下の記事を読んでこのリプレイに興味を持ったのでした(→http://berusupo.sblo.jp/article/7134636.html)。

シナリオ記法

先日TRPG Q&Aにも質問してしまいましたが、僕は最近シナリオ記法にすごく興味があるのです(→http://www.trpgsearch.net/modules/cqa/index.php?action=CqView&cq_id=3)。
ダンジョンだったら場所ごとにイベントを書くと思います。シティでも場所ごとにイベントを書くならダンジョン的な運用になるでしょうし、シナリオ記法というのはシナリオの構造を記述しているという意味で、シナリオ全体の雰囲気を決める大事なものなのです*1。これはリプレイだけでは学びにくい部分があり、どうしてもシナリオそのものが欲しくなります。

まぁそんな動機で購入して3巻読みましたが、やはり非常に学ぶところの多い内容でした。特に、”箱庭型”シナリオの記述法についてよく書かれていると思います。ただ、箱庭型シナリオの定義を僕がはっきり知りませんので、もしかしたら齟齬があるかもしれません。以下に簡単な定義がしてありますので、あんまりご自身の言葉のイメージにとらわれず以下を読み進めてください。

時系列型 場所型 背景・動機型

以下でシナリオの分類を行います。ゲーム的状況を作る5W1HをGMとPLどちらが担当するのかで分けるとはっきりしますね。こういう分解法については、以下の論考も参考にしてください。

時系列固定型

場所とイベントをPCの行動する順番に並べたものです。○○退治のようなシナリオは子の程度のシナリオ構造になることが多いですね。

GMが決めるもの when-where-what
PLに求めるもの PCのwhy, 課題に対するhow

ハイフン(-)でつなげたものは記述的に一緒に書くものです。
いつどこで何が起きるのかをGMが記述しておいて、PL・PCはそれにリアクションしていく形式ですね。

場所固定型

場所にイベントを書いておきますが、どっちの場所に先にいくのかはPCに任せる形です。ダンジョン型を思い浮かべてください。先ほども書きましたがシティでも場所ごとにイベントを起こすならこの型です。ダブルクロスでよくあるように、人ごとにイベントが起きることにしてもこの型ですね。

GMが決めるもの where-what
PLに求めるもの : how when

whyをどっちが決めるのかは場合によりそう。

背景・動機固定型

NPCの目標と大まかな舞台を決めてPCにからませる、実際に何が起こるのかはPCに任せる形。箱庭型シナリオというのはこれのことだと僕は思っています。

GMが決めるもの:NPCのwhy-what, where
PLに求めるもの: how-whre-when, PCのwhy
ちょっと箱庭型の定義に疑問が残る。この型では課題のwhatすらPC側で決めるという立場もありえそう。ただし、このxSのシナリオはこの形となっているので今回はこれで話を進めます。

本書の構成

1巻につき3話入っていまして、シナリオの型を分類しますと以下のようになります。

   一話 二話 三話
1巻 場所 時系列 場所
2巻 背景・動機 背景・動機 場所
3巻 時系列 場所固定 背景・動機

ダンジョン型のシナリオと時系列のシナリオは、ルルブ付属のシナリオなどでも良く見ることもありますが、箱庭型のシナリオの記述はあまり見れません。
背景・動機型シナリオはGMのアドリブにかなり頼るため、誰でも困難なく遊べるレベルのシナリオとして出すことが難しいのでしょう。

本リプレイはそのなかなか見れない背景・動機型シナリオの記述を見ることができるので有意義です。

教訓

背景・動機固定型のシナリオをする時の教訓など、僕が気づいた範囲で箇条書きにします。

  • 一応おおまかな展開は決めておいた上で、この部分は完全にPLとかダイスまかせなど自由な部分を決めておくこと
  • 舞台としてありえる場所もおおまかに決めておくこと
  • NPCの行動指針を良く決めておくこと。特に目的や降参する条件など重要。特定のPCに思い入れなどあるとおもしろいかも。
  • PCに目的を与える誘導が弱い場合、複数用意しておく
  • シナリオ背景に大きな組織がある場合、その組織が大胆に動けないような状況を設定する。内部分裂させて牽制しあうのが簡単。
  • キャンペーンの場合、シナリオの展開が収束しなくてもなんとかなる。1回限りのときにはなるべく収束させたほうが良い。

まとめ

SNEの古参、清松みゆきがGMのキャンペーンです。今回は使用するシナリオを公開しているのが売りで、ぜひ技術やノウハウを盗みたいところです。

背景とNPCの動機だけ決めておいて、あとは流れ次第とする、アドリブシナリオの記述はなかなか珍しいのではないでしょうか。そういうシナリオを作りたいときには参考にするといいと思います。
ただし、その書き方が教科書的にまとまっているものではなく実例のみなので、教訓は自分で引き出す必要があります。

全然物語の内容には触れませんでしたが、仮面ライダーを思わせる怪しげな話で非常に笑わせてくれます。次の巻で完結だそうですので、SWのリプレイは長すぎて…という方にもオススメです。

*1:さらに言うとこの前のダブルクロスリプレイアライブのロイスダンジョンでは場所ではなく人にイベントが付随してますが、シナリオ記法としてはダンジョンものとまったく同じです。