有機的に情報を整理する。人間関係中心シナリオ

ハンドアウトを使ったシナリオの紹介3回目はけっこう最近やったものです。

本記事の主張は人間関係図さえ書けば情報管理がすごく楽になるというものです。その点に注目してお読みいただければ幸いです。

今回紹介するシナリオはぶっちゃけると、ダブルクロスアルターラインにのってるリプレイ”煉獄と呼ばれた街”に着想を得てます。例によってシステムはソードワールド。ただしハウスルールを用いているのでソーサラの設定がすこし違うことにご注意ください。今回の世界観では脳に魔法をインストールして使う、そういう設定になっております。

とりあえず今回予告というか雰囲気提示。紅い夜とかそういうネーミングセンスってどうよ?とかそういうことは今回は不問。なんか最後の文章もうすこしうまくかけないのとかそういうことも不問。

――いつものように静まり返った夜
しかし起きていることまでいつものようだとは限らない。
紅く染まる魔法士協会の施設
むせるような血の匂い…
紅い夜 「ここにあるに違いないはずだが…」
男は少女を連れ、走った。
「ここまでくれば…」
これは魔法と人が生み出した悲しみのお話
これは魔法と人が生み出した希望を取り戻すお話
――あなたは大事なものを取り戻せますか?

次にハンドアウトはこんなの使いました。なんでハンドアウトを使うのかについてはハンドアウトを使わなかった場合について後述してありますのでそのあたりを参照してください。

PC1:幼馴染(スーア)に似た少女

あなたが道を歩いていると野良犬に吼えられてうずくまっている少女を発見した。
「??」
どうもその顔に見覚えがある。
あなたが幼い頃生き別れた友達スーアにそっくりだ。
彼女は寝てばかりで頼りない君に唯一優しくしてくれた同年代の友人だ。
噂ではジェクト(街の名前)に勉強に行ったと聞いていたのだが…。

PC2:紅い夜 関係:敵

あなたは通称、紅い夜という犯罪者を追っている。
魔法士協会関係の施設ばかり狙う強盗だ。
変装が得意でどこへでも入り込み、たくさんの犠牲者がでることでも有名である。
奴は殺しを楽しんでいる。それはあなたの剣の道と真っ向から対立するものだ。

PC3:シュウンラック 関係:兄弟子

あなたの兄弟子の魔法士(インストーラー)シュウラックからは細々であるが、連絡が来ていた。
「こんなに遅れたことはなかったんだけど…」
心配に思ったあなたは協会に確認してみると、驚愕の事実が明らかになる。
シュウンラックが勤める施設が襲われて、シュウンラックも殺されたらしい。
しかし、よくわからないことにその後、トロウ(街の名前)郊外の研究施設のそばで見かけたという噂も聞く。真相はどうなっているのだろうか…。
とりあえず魔法士協会からもらった彼の遺品を見てみることにした。

PC4:ワイズマン導師 関係:魔法士協会の恩師

貴方は呼び出され密命を受ける。
ここに記された冒険者とともに紅い夜を追って欲しいと…。

今回は人間関係を有機的に理解しながら、ストーリーを進めていくことにします。
ハンドアウトだけのときの人間関係はこんなもんですね。

スーアがヒロインであることはぶっちゃけてあるので、紅い夜に狙われていることはなんとなく分かってもらっていると思います。シュウンラック周辺は謎が多い感じで。


そろそろ事件背景を書かないと意味がわからないですね。

紅い夜は魔法生物で魔法の才能がある人に寄生して生きています。
スーアには特別魔法の才能があり、紅い夜に狙われています。
スーアは、魔法の実験のせいで精神薄弱になっておりシュウンラックはその兄で妹の治療を試みています。
紅い夜は魔法研究施設を襲ったのですが、スーアは取り逃がしてしまいます。
そこでシュウンラックに寄生して、もう一度スーアを狙っているという設定です。

ここから人間関係は線でむすんでいきます。
でもなんかめんどくさくなったので最終的な関係図だけ書いちゃいます。
オープニングから始まってこの人間関係を明らかにすることが調査フェイズの目的となり、明らかになったとなればあとは諸悪の根源と戦うだけですね。

これに基づいて必要だと思われる情報やシーンを用意しました。具体的には以下のような感じ。

  1. PC1−4を集結させるシーン
    • これは実は重要です。個別オープニングをすると必然的にPCたちがパーティを組んでない状況で始めることになります。ほんとはPCたちの出会い方なんかも凝ると面白いところなんですが、なかなか集まらなかったりすると事故につながります。今回はパーティを組むという部分は省略することにして、もう4人集めて依頼の形にしちゃいました。
  2. 紅い夜自体の情報
  3. スーアとシュウンラックに関する情報
  4. 紅い夜の狙いがスーアであるという情報
  5. シュウンラックとスーアが兄弟だという情報
    • 実はこのつながり重要です。関係図をみてもらうとわかるのですがこのつながりを切ってしまうと、紅い夜―PC1―スーアのヒロイン組と紅い夜―シュウンラック―PC3の兄弟子の敵討ち組みと2組に分けることができちゃいます。話の統一性が失われて別の話が二つ展開されている話になってしまうんですね。このつながりがあるとスーアがPC3にとっても準ヒロインになります。案外大事ですよ。
  6. シュウンラックが紅い夜に操られているという情報

用意すべき情報は点の情報と線の情報です。点の情報とはその人の情報で、線の情報とはNPCうしの関係の情報です。こうやって人間関係図を用意すると、何の情報を用意したらいいのかすぐ分かります。
PCから直接伸びる線はたいていハンドアウトで明示されてると思います。敵側の情報を集めてNPCの人間関係を明らかにしていくと、PCたちの動機なんかもはっきりし、戦いに赴く準備ができる、そういうお話でした。

ハンドアウトがない場合

ハンドアウトがない場合でも別にシナリオはまわせます。幼馴染とか兄弟子とか敵との因縁とか全部とっぱらってワイズマンから依頼させればいいんです。その場合でもシナリオはまわりますが、気になることはNPCのほうの設定が重すぎるというものです。NPCの設定が込み入っていてもいいんですが、NPCばっかりシリアスでPCの方はまぁ仕事だから解決しようていう感じだと重みのバランスが悪い気がするんですよね。シナリオの中心がPCにない感じがしてしまいます。依頼型だとPCは部外者になってしまうじゃないですか。そこが美しくないと思ってます。

キャンペーンでやればいいじゃないか!といわれると…

そもそもこういったPCの背景設定にかかわるようなシナリオは、キャンペーンなど参加するPCが決まっている状況で立てればいい。こういう意見もあるかもしれません。僕はそれに反対はしないんですけど、キャンペーンはフリーセッションとは逆の路線です。フリーセッションとはここではPLがPCを登録しておき、GMの参加募集にしたがってPLが参加希望を出す形式のことをさすのですが、この形式だと、自分がでれる時間にセッションの募集があるなら参加希望すればいいわけで、プレイヤーからすれば非常に出やすいです。

キャンペーンの場合は毎回決まった時間に全員集まるのがやっぱりきついと思います。だから僕は1回きりで短時間で終わることにこだわりを持っているんです。そういったフリーセッションでも、こういう濃い人間関係のセッションがしたい。そんなときハンドアウトっていうのは便利な技術だと思っています。

その他、失敗など

ハンドアウトの立て方や事件背景の作り方はうまくいっていると思うんですが、シーン設営の部分で少々失敗しているのでそのあたりを暴露しておきます。
今回のシーン設営はアルシャードガイアのリプレイ*1を参考にしていまして、以下の二点をもくろみました。

  1. ミドルフェイズでダイスを振って得られる情報は得ても得なくも進行には関係ない。ただし成功してればボスの強さが変化する
  2. 戦闘開始は強制イベントでGMの負担を軽くする

このうち前者に関しては紅い夜が結局なんなのかという情報とともに弱点を教えるつもりだったのですが、判定に失敗したため、何なのか教えられませんでした。正体が何なのか分からなくても倒せるのは倒せるんですが…敵がなんなのか分からないってのはいまいち盛り上がらないですねorz。何なのかだけ教えて弱点を教えなければよかったんですけど…。

後者に関してはこれはいかんと思いました。やっぱりPCの行動主導でボスと戦いたいですねぇ。いきなりでてくると達成感に欠けます。でもFEARのリプレイとか案外戦闘が強制イベントってあるんですよ。それで、気をつけてみてみるとそういう場合は舞台が凝ってたりインパクトがあるように作ってあります。みなさんに伝えたいことは安易に強制イベントで戦闘にしないってことともしするなら、インパクトのある舞台を整えてPLを驚かせることって感じです。