TRPGをつつむパッケージ

この議論乗り遅れたなぁ。
僕は先日の馬場論争から*1、この関連のことを調べていて白河堂さんのコラム*2を読みました。
あんまり話の本筋ではないんですが、TRPGのルルブがアニメ絵な表紙に包まれていることに関して東浩紀動物化するポストモダン*3の話がでてこないので、この辺は書いておくのがいいんだろうか…と思っていました。しかし、書こうと思っていた矢先に紅茶さん(id:koutyalemon)の記事で”動物化するTRPGだそーな”*4を見つけて、なんか盛り上がってる!先を越された!と悔しい思いに駆られてしまいました。
僕はハンドアウトのことで書きたいことを書き終わってなかったので完全に傍観しちゃいましたね。


動物化するポストモダンについてはもう2年以上前に読んだ本なわけで、読みかえさないと変なこと言っちゃいそうなので言いません。本の内容じゃなくてもうすこし僕の実感に近いところを述べていこうと思います。


小難しいものをキャッチーなパッケージでつつむ。これはよくギャルゲーでやられていることですよね。というかギャルゲーである以上、パッケージはキャッチーにならざるを得ないのですが、パッケージに比べて内容が難しいものがあるのは確かです。


内容が難しいものの例をつらつら挙げていくことにします。終ノ空ではテーマはずばり『哲学』だし、東浩紀がレビューしているEVER17なんかは、推理小説でいうところの叙述トリックで、非常に優れたものが使われています。僕は田中ロミオ好きなんでCross Channelは優れたループもの*5として、(これは内容が難しいわけではないな…)、最果てのイマハイパーリンク*6をノベルゲームに応用し、そのシステムとストーリーの絡みでおもしろい効果を挙げているものとしてその優れた構造を紹介したいです。新しいものでは車輪の国ひまわりの少女が挙がるかな、これは漫画のイキガミで、のように法律の違う架空の日本もので、逆説的に現代とか日本とかを浮かび上がらせる作品です。


僕の好きなギャルゲーを暴露しただけの結果になりましたが、まぁそこは放っておいてもらうことにしましょう。これら革新的な試みは普通のメディアでやるとなんか難しいだけで売れ残ること必至なんですが、ギャルゲーの体裁で出すことで、そのギャップも受けるのかけっこう売れます。終ノ空に関しては、『哲学』テーマにした小説なんて相当おもしろくないと売れないと思いますけど、これが今でも語られるほどの作品になってますしね。ちなみにライトノベルでも涼宮ハルヒはキャッチーな表紙ですが、使われている叙述トリックはなかなか凝ってますね。巻によって当たり外れがでかいですが…。あと…コンピュータや法律関連の本の”萌える○○”とかってこういう戦略ですね。
お前の例は偏ってて分からんという人もいるかも。構造が凝っているっていうんは伊坂幸太郎ラッシュライフなんかを思い浮かべてもらえればいいかなぁ。


なんにしろパッケージからは想像もつかないくらい凝っている作品がギャルゲーにはあるのです。その経験から、僕はTRPGの表紙がどんなにアニメアニメしてようと、中身までアホだとは決して思わないし、むしろ『案外凝ってるからこそこういう外見で出すことあるんだよな〜』と思って手にとります。しかし、その戦略を認めた上で、ほんとにアニメ絵で出す必要があるんでしょうか。まぁ買うの恥ずかしいとかそういう問題は置いておくにしても、イラスト決めると、それで想像する世界観も引きづられてしまうと思うのです。まぁ、そういっても僕が現在持っているルルブで特に世界観とイラストが合ってないと感じるものはないんですけどね。製作元がんばってます。敢えて言えばゲヘナの表紙はもう少しおどろおどろしくてもよかったかなぁ、中はけっこう世界観でてるのでいいんですけど。あっでもゲヘナの新しいほうのリプレイシリーズの表紙には違和感を感じますね。


小説なんかでは、日日日の”ちーちゃんは悠久の向こう”なんかではむしろライトノベルと差別化をはかろうとして、素朴な装丁にしていたりします。エニックスドラゴンクエストゲーム音楽にクラシック界からすぎやまこういちを起用しました。このへんはむしろ権威付けしようという方向ですよね。ファンタジーを主題にするRPGが多い中、糸井重里はMOTHERを出しました。MOTHERのパッケージってシンプルだけどインパクトがあってかっこいいですよね。こんだけいっぱいルルブでているんですし、他と差別化するという意味も兼ねて渋い装丁やスタイリッシュな装丁でルルブを出す意味はあるのではないでしょうか。

*1:馬場秀和ライブラリ

*2:白河堂さんのコラム『まず馬場理論に背を向けるところから始めよう』

*3:僕も動物化するポストモダンとかそういう本ばっかり読んでいた時期がありました

*4:紅茶さんの記事のもとの記事はここ

*5:主人公の行動による部分以外は繰り返し出来事が起こる世界に閉じ込められる話、ギャルゲーによくある、TRPG者はきくたけの白御子を思い出すこと

*6:文字をクリックするとその文字のリンクに飛ぶシステム