ベストセラー小説の書き方  ディーン・R.クーンツ, Dean R. Koontz, 大出健

ベストセラー小説の書き方 (朝日文庫)

ベストセラー小説の書き方 (朝日文庫)

小説を書く上で、初心者の陥りやすい穴などについて書かれた本です。ウケル要素というものをかなりぶっちゃけており実践的です。
具体的な書き方だけでなく、作家としての姿勢などにも言及があり、参考になります。特に、この本はエンターテイメントを書くことが決してくだらないことではないと強く主張していて、RPGのような娯楽を提供しようと思ったときに、非常に心強く背中を押してくれます。

HOW TO本ですが、独特の文体があり、読み物としても楽しめるので是非お勧めしたい本です。

自分のためにちょっと役に立ちそうなところを拾っておくと

アクションシーンのこつ

短文を連続させてスピード感をだす
とぎれない長い文章を多用することで、ほんとうはほんの一瞬で起こっていることの興奮を長続きさせることもある

キャラクターの動機付け

複数の動機をもたせるようにする ビジネス上の目的+感情的な理由

悪役の目的が金だけとかちょっとがっかりしませんかね。嫉妬とか憎悪とかそういうのもつけられたらつけたほうがいいです。

台詞

話し言葉と書き言葉は文体も内容も違う

僕は女性PCをやるとき「〜だわ」みたいなしゃべり方をする人は現実にはいないので違和感を感じたことがあるのですが、話し言葉と書き言葉は違うし、日常と小説では言う内容も言葉遣いも確かに違いますね。

ゲームシナリオライターの仕事  前田圭士

キャラクターを重視したゲームのお手本として天外魔境2、物語性(人物の成長など)を重視したゲームのお手本としてルナ2 エターナルブルーを取り上げ、その工夫点を通して、そのようなゲームをどうやって作っていくのかを述べた本です。

小説や映画などをお手本としたシナリオ作成本ばかり読んできたので、目のうろこがとれました。キャラクター性や物語をゲーム内の戦闘なので表現することは確かに可能だし、ゲームというメディアで遊ぶ以上それこそよく考えなくてはいけないところですよね。

単に、シミュレーションゲームとしておもしろい戦闘を提供するということではなく、キャラクター性や物語性がよく現れるようなセッションギミックや戦闘配置などを考えるのを今後の課題にしていきたいところです。

ちなみにこの本はいわゆるドラクエのようなRPGの作り方に特化しています。村人の台詞の作り方などはTRPGでは参考にならないでしょう。

リエーターズインタビューの個人的な感想

桝田省冶はすごいね。

ゲームでは、主人公の葛藤は眺めさせるものではなく、体験させるものなのだ。

なるほど。でもそれをするにはどうすればいいんじゃ〜!言っていることはすごく本質をついていて納得できる。でも実際にそれをするのは難しいです。

重馬敬はいい人です。

ファンタジーというものは、そういう現実世界に存在する嫌なこと、つらいことに立ち向かう勇気や力を与えていけるものだと僕は思ってるんです。

現実には正義が勝つなんて誰も信じない。でも正義が勝つと信じたい気持ちは確かにある。創作活動を通して、ただ現実の厳しさを認識させることにどれほどの意味があるんでしょう。シナリオライターの良心は大事だと思いました。

さくまあきらはなんというか…

さくまあきらのインタビューは一般的な技術的な話はあんまりしていなくて、経験談みたいなものが多いです。

雪深い山形の広い農家に住んでるんだけど自分の部屋は持ってない子。それがオレの仮想読者、仮想ユーザーなんだ。

ユーザーにこういう子供を想定するのは非常に良心的ですね。どこ見てゲーム作ってんのか分からないゲームが某スクエアエニックスあたりから良く出る気がするけど、クリエーターはこういう気持ちを取り戻して欲しいところ。

芝村裕吏(ゆうり)はコンセプトの人

ここでは、組織でゲームを作る際重要になってくるコンセプトやコンセンサスについて語られています。これも大事ですよね。某スクエアエニックスは(以下略)。

ノベルゲームのシナリオ作成技法 涼元悠一

ノベルゲームのシナリオ作成技法

ノベルゲームのシナリオ作成技法

この本は美少女ゲームと呼ばれるようなノベルゲームの作成法に特化してます。ちょっと業界に特化しすぎててTRPGには逆に使いにくいですが、何個かTRPGにも応用可能なところがあるでしょう。特にチャットで行うTRPGの文章表現については学ぶところが多そうです。

説明と描写

どうでもいいところは説明調で、大事なところは描写する。

漢字を開く

女の子の台詞なんかは漢字を使いすぎると堅くなるので積極的にひらがなを使ったほうがいい

「それは良い事だね」
「それはいいことだね」

ちょっと印象違いますな。

い抜き

「○○しているの」→「○○してるの」
「○○ではない」→「○○じゃない」
自分のタイプした文を一回音読してみるというのはTRPGでもいい方法かもしれませんよ。(このブログに誤字脱字が多すぎるのも一回読んでないのが問題です)

地の文

TRPGではどういう地の文が好ましいのでしょうね。
ノベルゲーでは主人公の実況調が良いとこの本では主張しているのですが…。

普通は3人称がいいと思うのですけどね。GMが実況調なのは不思議なので止めたほうがいいかもしれません。
”うぉ!? ゴブリンはあなたの持つランタンを叩き落としました!暗くて何も見えない!”
この勢いは微妙ですよね。あんた誰だw。

PLの場合は”私は○○します”でも”アルス(PCの名前)は○○します”でもどちらでも通じるけど、後者が多いかなぁ。
しかしそれは一方感情移入感に欠ける感じもします。


そういえばチャットセッションでの文体ってけっこう微妙ですよね。

立ち上がります 何もつけない文はPCの行動
「こらしょっと」 「」がついているのはPCの台詞
「こらしょっと」@じじくさいなw @以降はPL発言。でもこの記号はそこまで一般的ではないと思う。遊ぶ仲間で違ってきますね
「(ひざが痛いな)」 「(…)」は心情描写 心情描写はやめてって取り決めのところもあるらしい。「」はないこともあるかな。

チャットにおける文体っていうのは、一度よく考えたほうがいいのかも。

泣きゲーの正体

単に泣きゲーを作るだけなら、そう難しくないということです。
……手法の説明……
泣きゲーに単なるお涙頂戴と異なるところがあるとすれば、ただの一点のみです。
名作と呼ばれる泣きゲーを作った人間は、自分のシナリオに泣いているはずです。
それほどまでにこの手法はプレイヤーを巻き込み、作り手の感情までをも危ういまでに揺さぶります。

僕も密かにNPCの台詞を打ちながらかわいそすぎて涙がでたことがあります。泣きゲーの技術はひどく簡単で、僕ですらこのブログで何回か解説していますが、自分が泣けるくらいのシナリオじゃなければ、人を泣かすなんて難しいというのは確かにそうかもしれません。まぁTRPGの場合は予定シナリオは予定シナリオで実プレイは実プレイなので、感動の展開にならなくてもしょうがないってことは認識しなきゃいけないとは思います。

TRPGのシナリオ作成

たくさんのシナリオ作成本を紹介しましたが、TRPG向けのものは実はものすごく少ないですね。
RPGシナリオメイキングガイド (Fantasy Making Series)ぐらいでしょうか。しかしこれはちょっと古くて、あまりてっとりばやい方法が書いてあるわけではありません。

シナリオ作成の手順としては、ゲームシナリオのドラマ作法がよくまとまっていますが、TRPGに応用する際には一つ大きな問題があります。

クライマックスを作るためには主人公とボスの主張の対立を書く必要があります。一番簡単なのはゲームシナリオライターの仕事 名作RPGに学ぶシナリオ創作術さくまあきらが述べている”自分が許せないことを悪役に設定してその逆の主人公を作る”という方法ですが、TRPGではボスはGMの管轄で、主人公はPLの管轄です。TRPGで、これを行うのは形式上難しいですね。

TRPGでシナリオを作成する際には、ちょっと違ったシナリオ作成手順が必要だと思いました。

…シナリオが作れないのでこんな現実逃避記事を長々と書いてしまいました。