知識と推論 新田克己

知識と推論 (Information Science & Engineering)

知識と推論 (Information Science & Engineering)

僕は昔から物語を作る工学に興味がある*1 *2

昔Vampire.SさんがデザインしたTRPG、RuneWarsのお話を聞いていて*3、物語どこまで形式的に作れるのかずっと気になっていた。物語を文章の束と捕らえたとき、既存の文章の束から新しい文章を作り出すルールさえあれば、最初に文章の束を用意するだけで自動的に物語ができあがる。

これを僕は前の文章から次の文章を推論するというモデルで考えていた。もともとP_1,P_2,P_3,P_4,...という文章があったときに{P_i,P_j,P_k}⇒Qという推論が成立すれば新しい文章が作れるというモデルである。⇒というのは推論記号と呼ばれることから、推論について調べればこうしたことが分かるんじゃないかと考え、推論についての本を読んでみた次第である。

でも、読んでみて自分の間違えを感じた。物語における推論とは、大まかに”時間変化”であるが、普通論理学で言うところの推論は”論理的帰結”である。そんなこんなで最初の興味とは少し外れた形になったが、本書は内容としては面白いものであった。

普通推論といえば演繹か帰納を思い浮かべるだろうが、発想推論というものがあることを初めて知ったし、意味ネットワークや事例ベース推論などの考え方も面白い。法律を適用するときの推論というのもTRPGでルールを適用するときの推論に似ていて面白かった。

説明する一つ一つの事柄について浅く、あまり深い知識を得られるタイプの本ではないので、入門書として読むと良いと思う。