個人の興味、一般の興味

ggincさんがいつもすぐに返信をくださるので逆に申し訳ない気になります。今回は紅茶さんまで補足して頂いたみたいですねw

僕の言いたかったことはとりあえず伝わったみたいで良かったです。でも、せっかくここまで言ったのだから関連した言いたいことを最後まで伝えちゃえと勢いでもう一度お返事をおかきします。

ただし前の記事の補足ばかりしているのは後ろ向きですので、もうすこし一般向け、といいますか大学院生一般向けのお話をさせてください。

大学院生が論文を書くときによくする間違い

あんまり個人情報をブログで公開したくはないのですが、実は僕は研究職についております。それで大学院生の論文を共同研究者として校正することが多いのですが、初めて論文を書く学生が必ずといっても良いほどする間違いがあります。

それは、論文の導入部分に自分の興味を書くことです

研究者は普段自分の興味に従って研究していますが、その興味とは世界中で十人も共感できる人がいないかもしれない、ものすごくマニアックなものであることもあります。

しかし、論文の導入部分では、”読者が興味を持っていること”に基づいて書かれなければなりません。読者というのはこの場合はここでは同分野の研究者のことです。そうでなければ、その重要性を理解してもらえず結果を読む前に読むのをやめてしまいます。研究結果というのは、自分の興味で位置づけられるのではなく、読者の興味で位置づけられるべきものなのです。

この変換は慣れないうちはなかなかできません。そもそも研究者という人種は自分が興味を持っていることに関してはどんな努力も惜しまないものの、興味がないことには一切行動できない傾向があります。指導でもなかなか分かってもらえないことが多いです。

重要なので繰り返しますけど、『個人的に〇〇に興味があるので○○について調べました。』というのでは実は論文にならないってことは是非覚えておいてください。

おまけとしてもう少し詳しく言うと論文での冒頭部分というのは以下のようなフォーマットで書かれます。

1. その業界一般にとっての研究意義
2. 先行研究とその不足点
3. 今回の自分の着眼点
このあとは手法、結果、考察、議論と続きます(投稿誌のページ数の制限などによっては若干違うこともあります)。

論文の場合はこうして構造がはっきりしているため、長くても意味が伝わるのでしょう。この論文で何が言いたいのかわからなくなったら冒頭を読めばいいとか、その結論の確からしさを知りたければ手法を読めばよいとか。

一般TRPG者に読まれるTRPG論考とは

TRPG論考で同じことを考えると、読者がTRPGプレイヤーな場合のTRPG論考の導入の仕方というのは、どうしたらTRPGが面白く遊べるかという1パターンしかないように思えてきます。TRPGプレイヤーという名でまとめられた分類の読者が完全に共感できる話題というのは、たぶんそれしかありません。

この方向で先の会話型RPG(TRPG)における〈プレイング〉の内実(改訂版) - God & Golem, Inc.を書き直すなら、以下のようなロジックの流れになるのでしょう。

1 (意義)TRPG内で行われる基礎的な手順の確認はTRPGを面白くする可能性がある。
2. (先行研究)例えばAの魔法陣では質問と行動宣言をきちんとわけて処理するようルールブックに書いた結果、プレイの効率化が図られているいるし、質問しながら状況を確定していく新たな面白みも強化されている(○○が何年に指摘)。
3. (着眼点)このようにPLとGMのやりとりの手順に着目した論考はあったが情報の質そのものに触れているものはなかった。今回はこれに着目する

まぁこんな流れになるんじゃないでしょうか。

ゲーム全般に興味がある人に対する論考

ただ、こうしてTRPG者を読者にするより、ゲーム全般に興味がある人をターゲットにしたほうが、『そもそもゲームとは何か』というの問いから始められるので、こうした基礎の確認にはいいかもしれないですね。

例えば以下のような感じです。
1(意義) プレイヤーがキャラクターを操るタイプのゲームにおいてプレイヤーとキャラクターの関係性を解き明かすことはゲームそのものを理解する時に重要だろう。しかしゲーム世界でのリアリティをプレイヤーがどのように獲得しているのか、うまく理解されているとは言えない状況である。
2. (先行研究)A.Fineはゲーム世界の情報の伝達が口頭で与えられ、抽象度が高いという意味で特殊なTRPGに着目し、上記の問題を考察した。A.FIneの考察で○○ということがわかった(僕は何が分かってるのか知らないので書けませんw)。
3. (着眼点)A. Fineの結論は参考にするべきものであるが、まだまだ概念的でより詳しい調査をする必要がある(かどうかは知らないのですけどw)。そこで今回は実際にTRPGを遊んでいるときに、どのような情報が伝達されているかを明らかにした。

ggincさんがあとで補足してくれたように、後者のような位置づけで導入を書いたほうが面白い話になるんじゃないかと思います。でもその時にこれに興味を持ったから調べましたと素直に自分の興味を吐露するよりも、上のように大きな意義と先行研究による位置づけを行ったほうが、興味を共感できない人にとって読みやすくなると思います。今回のをまた直せとは言いませんので、もし僕の意見に賛成ならば気をつけて見てください。

読者は誰か

とはいえ、ブログという場の発表ではここまで書くのはなかなか大変かもしれません。そんな時には、これは個人的な興味に基づくものなので、問題意識に共感できない方は読者として想定してないとか書いてもよいだろうと思います。