ガンドッグゼロ リプレイ アゲインスト・ジェノサイド 岡和田晃

ガンドッグゼロ リプレイ アゲインスト・ジェノサイド (Role&Roll Books) (Role & RollBooks)

ガンドッグゼロ リプレイ アゲインスト・ジェノサイド (Role&Roll Books) (Role & RollBooks)

ガンドッグは旧版は持っていますが、ガンドッグゼロは買っていません。このリプレイはスルーする予定だったのですが、どうも絶賛されているようですので*1買ってみました。

印象なのですが、難しいことはさておき面白かったです。銃撃戦や工作において面白い、達成しがいのある遭遇*2が考えられています。ガンドッグは少々複雑ではあるもののシステムがよくできているので、おもしろい遭遇が出せればまず成功でしょう。ターゲットレンジシステムの使い方もオーソドックスでありながらもドラマチックで、セッションが盛り上がったでしょうね。

マップの使い方もうまく、おもしろい遭遇を演出していました。マップは具体的ならばいいということでもなく、ある程度抽象的にしてしまったほうがゲームの処理に見通しがききやすくなることもあります。なかなか勉強になるマップの使い方がされていましたね。

ガンドッグは時代設定は少々近未来といえど、SF的な設定はほとんどなく、現代物と言ってもよいでしょう。現代物では国家や組織の思惑が絡み合い、複雑かつシリアスな状況になることをありえます。このような背景の複雑さは物語に深みを与えてくれる一方、読者が物語に没入するのを妨げる要素ともなりえます。このリプレイではこの背景の複雑さと正面から向き合っているところが良いと思いました。

僕はリプレイと小説の違いに興味を持っているのですが、その違いの一つは読者とプレイヤーの距離にあると思います。リプレイでは長々と心情の描写などはされないので、なぜ物語の登場人物がその行動をとったのか理解するための情報が少なくなります。そして通常その情報の少なさはルールブックという常識で埋められています。したがって読者とプレイヤー間で世界観やルールに対する知識の差が大きい場合、プレイヤーのした行動宣言一つ一つの意味をうまく理解できない可能性があります。

このリプレイでは、プリプレイにて行われたセッション背景の説明をかなり詳しくまとまった形で読者にも供給しています。正直読むのがめんどくさい部分でもあるので、こういう部分を載せるのには勇気が必要だったのではないかと推測しますが、必要な説明でした。他のリプレイにくらべてこうした部分は一歩踏み込んだリプレイになっていると思いましたね。

まぁ小難しいことも書きましたが、あまり難しく考えず楽しんで読めば良いのではないでしょうか。おもしろい遭遇に関するアイデアが豊富なのでその参考書として優れています。

*1:例えば岡和田晃『アゲインスト・ジェノサイド』(読了直後の感想) - God & Golem, Inc. アゲインスト・ジェノサイド:ガンドックゼロ リプレイ - 鞭打苦行のThrasher

*2:プレイヤーキャラクターが克服すべき課題のことです。D&Dではよく遭遇という言葉が使われます。専門用語としてこの言葉を使うと意味が限定されて使いやすいので使っていますが、この言い方を知らない方には伝わりにくいですね。すみません。