ゲームデザイナーの仕事 プロが教えるゲーム制作の技術 前田圭士, 桝田省治

僕はTRPGに使うという文脈でゲームデザインの本やシナリオ作成のhowto本のレビューをしてきました。今までのレビューについてはこの記事の最後を参考にしてください。

この本は前にレビューしたゲームシナリオライターの仕事 名作RPGに学ぶシナリオ創作術*1の続きに位置しています。前回はゲームのシナリオ書きに特化した内容でしたが、今回はどちらかというとゲームデザインや発案側の立場の仕事の概要とコツを語ったものです。発案者が運営することも多いためか、運営のノウハウなども豊富です。

この本は以下のような章立てになっています。

  1. ゲームデザイナーの仕事とは
  2. ゲームデザインの基礎知識
  3. ゲームデザイナーのためのシナリオ知識
  4. ゲームデザインの応用テクニック
  5. 企画書作成のポイント

僕は別にゲームを企画して予算をもらって作りたいわけではないので、この本のほとんどの部分にはあんまり興味がなく流し読みしかしていません。TRPGのGMとして、気にしなければならないのは主に3章のゲームデザイナーのためのシナリオ知識とゲームデザインの応用テクニックだけですから、そこを読んだ感想となります。

シナリオ構造

最近ではB.Wさんが熱心にシナリオ構造について考察を重ねていますね。なんとかまとまってきたようで個人的に期待しています。

シナリオの作成の難しさはどこから発想していくのか、工程の上流と下流がごっちゃになりやすいことによると個人的には思っています。シナリオギミックから考え出すのか、世界観から考え出すのか、キャラクターから考え出すのか、スタート地点によって思考過程の上流と下流が逆転してしまうこともあり、なかなか一般的なシナリオ作成法を示すことができません。

シナリオ構造を考える際に重要なのは、シナリオ構造とは目的に沿って選ばれるということです。シナリオ構造を先に決めてからシナリオを作り始めるなんてことはありえません。箱庭シナリオをやりたいと、シナリオの構造を先に決める場合にも、それは”PLに高い自由度を感じて欲しい”という目的があってのことだと思います。

さて、本書に話を戻します。この本で紹介されているのは以下の6つのシナリオ構造です。

  1. 一本道
  2. 分岐
  3. 並列
  4. 樹木
  5. マルチ
  6. モザイク

本書ではこれらの構造のメリットとデメリットが挙げられています。

名前だけ出されても分からないでしょうから、以下で一つ一つ説明します。

一本道

シーン1→シーン2→シーン3
と展開する。→は時間進行だと思ってください。

以下でいろいろな構造を示しますが、PL側からみたときにはシナリオは必ず一本道になることに注意してください。複雑ですばらしいシナリオ構造を作ったとしてもGMの自己満足に終わってしまうのは残念なことですね。

分岐
シーン1 →→ シーン2A シーン3A
     ↓             
     →→ シーン2B シーン3B

分岐はPCの行動によって結末をわけた構造です。まぁ分岐というからには、Aルートを選んだらBルートにはいけないような構造になってないといけません*2。両方いけると分岐としての意味が薄れます。分岐っていうのは”結果”が分岐することに注意。過程が何通りかある場合は並列と呼称したほうが分かりやすいです。

並列
シーン1 →→ シーン2A →→ シーン3
     ↓        ↑      
     →→ シーン2B ↑      

一旦別れて合流する。途中経過を大切にするときに使う。

樹木

なんか表で書けなくなってきました。分岐と並列が入り混じったパターン。完全に分岐でもなければ完全に並列でもない。

ただし、あまりに複雑にしても作るのが大変なだけだということに注意しましょう。

ゲームにおいて物語に選択性や可変性を持たせるのは、ただの手段です。手段と目的をはき違えてはいけません。また、構造の複雑さと面白さは関係ありません。ゲームシナリオの目的はプレイヤーがキャラクターやゲーム内世界に感情移入しやすくするためであったり、プレイヤーの戦った結果などによってゲーム内世界情勢が変化するようなゲームシステムを成立させるためであったりするわけです。その目的のためにゲームシナリオを使うのです。
ゲームデザイナーの仕事 プロが教えるゲーム制作の技術

マルチ

いわゆる箱庭とかダンジョンとか。場所Aにいったあと場所Bにいってもよいし、場所Bにいったあと場所Aにいってもよい構造。場所Aで起こるイベントと場所Bで起こるイベントの因果関係が薄い場合に、このような構造にしやすい。

森や海を探索するウィルダネスシナリオや宝探しなんかにも向いてます。箱庭型のシティアドベンチャーが難しいのはマルチ構造でありながら、イベント同士の因果関係が強いからですね。

モザイク

フラグをたてたり、パラメーターで管理する。例えばヒロインからの好感度がある程度高いときには2月になるとバレンタインにチョコがもらえるとか。時間経過とパラメータでイベントを管理する。

なぜこれにモザイクという名前がつけられているかというとイベントと行為の表を塗りつぶす形で出来ているからです。ちょっと例を挙げましょうか。

助っ人の好感度 3以下 3から5 5以上
助っ人登場       ■   
ボスが弱体化     ■  
助っ人が実は未来から来た娘
助っ人のエンディング

なんかヒロインが未来からきた自分の娘だとして、そのヒロインとどれだけ交流を深めたかによって起こるイベントが変わるとか、まぁそういう表を書いたつもりです。


最近はこの分野の発展が目覚しい気がします。Aの魔法陣とかシナリオクラフトもある意味こういう管理の仕方ですね。

リプレイではSWの猫の手冒険者シリーズでこのシナリオ制御をうまく用いています*3

大別

さらに大別すると、以下のようになりますね。
一本道、分岐、並列、樹木などは結局イベントの時間順序に意味がある場合の作り方。
マルチはイベント同士の時間順序にあまり関係がないとつくりやすい。
モザイクは、フラグをたてたり数値を使ってシナリオを制御する方法で、時間や場所意以外の要素でシナリオを管理したいときには使うとよさそう。

まとめ

前田圭士著の”ゲームデザイナーの仕事”のシナリオ制御の部分を基にしてシナリオ制御の種類を整理・考察しました。

シナリオ構造はどんなシナリオをやりたいのか考えて、適した構造を選ぶ必要があるります。そのときの参考になれば幸いです。