悠久の光 (ダブルクロス・リプレイ・アライブ 4) 矢野俊策, F.E.A.R
悠久の光―ダブルクロス・リプレイ・アライブ〈4〉 (富士見ドラゴンブック)
- 作者: 矢野俊策,F.E.A.R.,しのとうこ
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2008/02/20
- メディア: 文庫
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リプレイ・アライブの最終巻。納得の出来でした。
ロイスの可能性
ダブルクロスではロイスのとり方によって展開が変わるようなギミックを仕掛けることが多いと思いますが、ここにすごく可能性を感じています。シナリオフラグの立て方という意味では、この課題は他のTRPGにおけるNPCの態度を変化させるような〈課題〉と似ています。
他のシステムではこの課題どのように取り扱われているでしょうか。
例えばD&Dではいわゆるロールプレイ的遭遇の処理法*1は社会系のスキルを使ってダイスを振るかPLの口のうまさをみるかして、NPCの反応が良くなるみたいな感じですよね。
さてこのロールプレイ的遭遇ってちょっと意味が分かりづらいと思うので、もう少し一般的な言葉を使いたいのですが、以下のように分けたときのソーシャルを思い浮かべるといいかもしれません。
≪ハック≫ : 探索し、情報や物資を移動することで攻略 ≪スラッシュ≫ : 戦闘によって障害を駆逐することで攻略 ≪ソーシャル≫ : 社会性を改善することで攻略
ダブルクロスでロイスを使って広い意味でのソーシャルな課題を解決するっていうのは面白い考えかたですよね。資源管理にもなっている上に、MPみたいな一般的なものではなく名前や感情などのタグを持った資源です*2。
人との交渉とかそういう大事な場面で、ダイスを振るというのはちょっと味気ないし、完全に言葉の説得力に頼るようだとPL力によりすぎる。それらに比べてこのロイスで処理っていうのはつけるタグに対して想像力も必要だし、ゲームの中核的な資源管理にもなっているわけです。
本リプレイや先のストライク2*3などではGMの想像力を超えたロイスの使い方をPLが編み出していているそうですが、このように資源管理を伴うとGMの考えとPLの考えが比較しやすいですね。考えを比べるのは曖昧さが残りますけど、資源を使うとそのあたりがはっきりしています。
また、単に言葉で選択するよりも、ゲーム上の資源管理を伴うほうが決断に説得力が生まれますね。
テーマ
矢野俊策王子はなかなかこみいったテーマでシナリオを作りますが、ぜひ見習いたいですね。
大人が真剣になるストーリーゲームには、やっぱりテーマがあったほうが良いと思うのです。
もちろんテーマっていうのはPLが感じるものとGMがしかけるものは違いますし、意図的にしかけるしかけないの趣味はあると思いますけど。
王子のリプレイは本作にかぎらずこのあたりの思考過程などをあとがきで公にしており、非常に参考になると思います。
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展開予想
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僕の展開予想は当然のように当たってましたね。まぁこういう設定にした以上これしかないのです。
*1:あんまり詳しくありませんので間違ってるかも
*2:僕もうまく言えてないのですが、ロイスをつかったイベントフラグの処理は、自然言語処理(=物語的叙述による表現)と形式言語処理(=いわゆるボードゲームデザインの手法による状況の抽象化とその判定による表現)from ルーンウォーズ勉強メモ - God & Golem, Inc. の両方を使った課題解決法で、それはここでいっているソーシャルとかロールプレイ的遭遇の解決法として優れているのではないかと考えています。
*3:天からの呼び声―ダブルクロス・リプレイ・ストライク2 小太刀右京, F.E.A.R - ブレーキをかけながらアクセルを踏み込む