ばいばい、アース 3 4 冲方丁 キム・ヒョンテ

ばいばい、アースIV 今ここに在る者 (角川文庫)

ばいばい、アースIV 今ここに在る者 (角川文庫)

4巻で完結です。大作でしたね〜。

本書は2000年に一度出版されたものを直して文庫化したものですが、僕は実は初期の冲方丁に不安を持っていました。なぜならデビュー前の作である黒い季節*1を少し読んだところ、あまりに読みづらく中二病的で読み進められなかったからです。黒い季節は積んであります。

しかし、このばいばいアースは1,2巻を読むだけでその不安は払拭されました。だいぶ読みやすくなっていますね。3,4巻になるとぐっとテーマに近づいてちょっと分かりづらくはなるのですが、23歳の 冲方丁が力いっぱい執筆に挑みかかるその勇気を賞賛せずにはいられません。

本作は彼の中での位置づけとしては小説を構成する主題(テーマ)、世界、人物、物語、文体のうち前二つの習得を目指して書かれたものだそうです。後ろからいかないところが冲方丁のでかさと型破りさを表してますね。

さて、冲方丁が拘ったこの小説のテーマは何かといえば、”自らの存在理由”です。途中だいぶ哲学的な用語が出てきて、その言葉遊びが若い頃に一度ははまるこのテーマを彩っています。表面的には剣と魔法のファンタジーですが、その深部は自らの存在理由を問いかけることとはどういうことなのかを描いています。

実は僕は、剣のスペルの意味に気づいたのが3巻だったのですが(にぶい)、意味が分かるとまた深みがますと思います。

さてだいたい語り尽くしたでしょうか。文庫版になりキムヒョンテの絵になりましたが僕は好きですね。特に4巻のふとももっぷりには脱帽です。1、2巻はエンターテイメントとして非常に優れているのに対し、3,4巻ではテーマに近づくにつれ話がつかみづらくなります。しかし、若い冲方丁の型破りな挑戦に、その後の成長の芽を見ることができるのではないでしょうか。読むのがけっこう大変なんですが、僕はおもしろく読ませてもらいました。

*1:

黒い季節

黒い季節