英雄でも勇者でもないただの人が織り成すエンターテイメント
ggincさんの”〈一意的描写〉と〈意志決定〉の対立─『Aのネットラジオ』で語られた演劇論からTRPGを考える”は、外面的なものと内面的なもの、演劇論の二つの立場を紹介し、今までのTRPG界は外面的な演技と想像力に支えられたヒロイックなTRPG作品を作ってきたが、内面的な演技と想像力に支えられた、自然主義的なTRPGがあまり生まれてきてないという問題点を指摘したエントリーでした。
ここでggincさんが挙げている例が、チェーホフの『桜の園』だったりして、純文学に寄っていますので、あまりに高尚で自分には関係なさそうな話と思った方もいたのではないでしょうか。しかし、けしてそんなことはなく、ヒロイックでないTRPGにもエンターテイメントを期待できるということを卑近な例を持って示してみたいと思います。
まず、僕はggincさんの疑問をこう言い換えます。
犬夜叉はTRPG化できるのに、めぞん一刻はTRPG化できないのはなぜか?
犬夜叉*1は実際にTRPG化されているかはともかく(同人ではあるかも?)、いかにもTRPG化できそうですよね。一方めぞん一刻*2をTRPG化するとなるとどうデザインしたものやら…と頭を抱えてしまいます。
めぞん一刻はコメディマンガですし、人物に多少はキャラクター的な面*3もありますが、あの話の主軸は五代祐作と音無響子の関係の変化にあり、二人は決して一面的なキャラクターして書かれていませんよね。ここで気をつけたいのは、犬夜叉とかごめの性格が一面的だといいたいわけではないということです。そうではなく、TRPGとして作った場合はとりあえず、戦闘面を強調して妖怪同士の戦闘ができれば犬夜叉TRPGができますが、いっぽうかごめと犬夜叉の関係性を主軸としたTRPGを作るとなると結局難しくなってしまうということがいいたいわけです。
次に、”めぞん一刻TRPGをしておもしろいか?”ということに話を移らせてもらいます、つまんなそうならば、存在しないのが当たり前ですしね。
めぞん一刻TRPG
具体的に考えるために、とりあえずAマホでめぞん一刻をしてみることにしましょう。
その場合、M*はこんな感じでしょうか。
M*音無響子と結婚する:難易度 25:制限時間5年:1ターン1年:難易度決定の前提 5年 日本人 わりとかっこいいライバルがいる場合:抽出条件は響子の心を動かしたり、結婚にむかいそうなもの
しかしこれを書いてもAマホを知らない人には伝わらないか…w。Aマホ知っている人はうぉ〜おもしろそう!って思いますよね?思わないかw
Aマホ知らない人にはなんて説明したものやら。とりあえずM*の次にあるのはゲームの目標です。今回は音無響子と結婚することを目標にいろいろがんばる感じです。具体的には制限時間5年、1ターン1年ってことで5回成功判定ができて、その5回の”攻撃”で難易度という”HP”を25削り取れば勝ちとなり、目標が達成できます。
5回の攻撃をどうするかというと問題を分割して処理します(分割しなくてもいいですが)。例えば、音無響子と結婚する=”親しくなる”+”大学受かる(落ちたほうがいいかw?)”+”ライバルを片付けて”+”家族の信頼を得る”って感じでしょうか。分け方はPL次第でうまい戦略をたてるわけですよ。その後それぞれを行動判定してうまくいけば難易度が削れるって感じです。こうしてめぞん一刻もAマホなら立派な遊びになるわけです。しかも僕の感性からするとすごくおもしろそう。ちなみに、原作臭が嫌なら、もちろんこれは響子さんではなくてもいいわけですよ。このM*だけ残して舞台設定もPLにさせるほうがAマホらしいかもしれません。
ただの人の普通の生活はちゃんとエンターテイメントなのです。調子にのっていろいろM*を考えてみました。
M*自分の居場所をみつける
元ネタはりびんぐゲームです。この東京の住宅事情のなか、どうやって自分の場所を作っていくのか。
M*ピアニストとしての自信をとりもどす
元ネタはロングバケーションです。僕はテレビをあんまりみないので例が古くてごめんなさい。
M*余命3ヶ月の杏子の人生を充実したものにする
元ネタはビューティフルライフです。なんかキムタクばかりですねw。
まぁ僕は常盤貴子が好きなんですけど。もうこのM*を書いただけで泣きそうになります。
まとめ
こんなわけで、いろいろ挙げてみました。ただの人が織り成す人生がちゃんとエンターテイメントとして成立し、落とし込み方によってはちゃんとTRPGになりそうなことがわかっていただけたでしょうか。
ところで書いてて思ったのですが、AマホでPC同士のコンフリクトがある場合はどうするんだっけなぁ。こういうシナリオをやるなら確実にでてきそうなネタだけど…。そういう場合ちょっとギミックを凝る必要があるかもしれませんね。また、Aマホでうまく処理できないなら、新しいこういうネタを扱うシステムを作るときの売りなるかもしれません。