「世界征服」は可能か? 岡田斗司夫

「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

この本は帯に4つの支配者タイプの分類が載っていまして、ちょっと気になっていました。


先日、<弄られ属性を自覚しはじめた>冬摩さんと正義論の話をしてまして、
「ちょっと冬摩さん、正義論でシナリオを作ってみなよ」
「いやいやアクセラレーターさんこそ作ってくださいよ」
という、至極当然な返しをされまして、んじゃ作ってみよ〜かなぁ〜ってことに。
正義を考えるということは、逆に悪を考えるということでもあります。この本が役に立つかなぁと思って読んでみた次第です。

世界征服に特化しすぎ?

ちょうどまりおんさんが読んでいて、わりとネガティブな評価でしたが同意ですね*1
理由ははっきりしていまして、僕は正義・悪論を期待して読んだのに、この本はあまりに”世界征服”に特化されていたからです。

ちょっと考えてみてください。最近みたマンガでもアニメでもラノベでもいいですけど、”世界征服”なんてものを掲げた悪はいますか?

本書の後半で示されるように”世界征服”って、リアリティがないんですよね。ただし達成可能かという理由ではなく、達成してどうするのかという理由でです。世界征服は当然手段であって目的ではないはずなのですが、世界を征服しないと達成できない目的なんてそうそうないですよね。

本書の第3章で世界征服の具体的な手順を考えていまして63ページほどついやされていますが、世界征服の実現可能性については、そんなにクリティカルな問題ではないと思うのです。繰り返しますが、むしろ本書の第2章で議論されている世界征服の目的のほうがずっとに問題です。21ページしか費やされてないですけどね。
その中ではいかの5つというか、4つがあげられています。

  1. 人類の絶滅
  2. お金が欲しい
  3. 支配されそうだから逆に支配する
  4. 悪を広める
  5. 目的が不明

まぁ、ここが僕にとっては一番重要な箇所だったのですが、これは”世界征服をたくらむような悪”に議論が特化されすぎていて、あまり一般的な悪論には成りえていないようです。


最終章、”結論:これが「世界征服」だ”で、現実世界における新しい世界征服を提唱していて、これはそれなりに重要なことを言っていますが、一つの興味深い世界征服を提唱しただけで、現代的な世界征服を俯瞰したわけではありません。

僕の興味とは結局噛み合わなかった一冊でした。

まとめ

要するに”世界征服”にほんとに特化した話が展開されています。帯に支配者のタイプ分類が書いてありますが、一般的な悪論が俯瞰的に展開されているわけではないと思います。”世界征服”に興味がある人にはいい本でしょうが、そもそも、世界征服を夢見たことがない人にはなんのことやらという本です。興味が噛み合わないと思います。