狼と香辛料 5 支倉凍砂

狼と香辛料〈5〉 (電撃文庫)

狼と香辛料〈5〉 (電撃文庫)

”仕事と私どっちが大事なの?”そんな質問をされて答えに窮するあなたにうってつけの第5巻。

この狼と香辛料は、もともと、ファンタジーにおける”経済”に焦点をしぼり、商人が主役であるという異例のアイデアで人気を博してまいりました。本作でももちろんそれは健在…というよりもますます過激化し、商人のたちの戦いは既に”死闘”と呼べるいきまでたっしております。
また、本作にはもう一つ大きな魅力があり、それはロレンスとホロの機知に富んだ会話です。これもロレンスが商人であるというところに因っている部分が大きいと思いますが、一筋縄ではいかない会話がくりひろげられます。本心をそのまま言わず、相手にもなめられず、しかし、これまた甘い、ほんとに甘いトークはホロとロレンスの仲が進んだことでより激しくなっていますね。にやにやしながら楽しめること請け合いです。

狼と香辛料の魅力はこのように従来通りです。しかし、狼と香辛料も5巻となり、ロレンスとホロの旅も刻一刻と終わりが近づいていますね。お互いを思い、冒頭に述べたような、”仕事と私どっちが大事なの?”問題が生じてきてしまうわけです。
個人的な話で恐縮ですが、僕がこの質問をつきつけられたのは高校生のころでした。そのときはイキナリだったので答えに窮してしまいましたが、今ならきっと顔色をかえず、しかしたぶんちょっとテンパリながらも、とりあえず嘘がつけるようになったに違いないと信じてます。「エエ、アナタニ キマッテルジャナイデスカ」と。

まぁそんな僕の個人的な事情はさておき、宿でであった商人、エーブの金に対する態度と、ロレンスの決断が対照的に描かれ、ちょっと複雑ながらも重層的にテーマを描いているところに好感が持てます。

本編は340ページほどですが、今回は文字数も多くてけっこう読むのが大変でしたね。昨日読み終わると思ってたのですが、1日伸びちゃいました。まぁ先日読んだDDDに比べれば圧倒的にらくちんですけど…。

さて、”仕事と私どっちが大事なの?”この問いにロレンスがどんな答えを出すのか、気になる人は書店へどうぞ!