ひと夏の経験値 秋口ぎぐる

ひと夏の経験値 (富士見ドラゴンブック)

ひと夏の経験値 (富士見ドラゴンブック)

思わず懐かしくなる一冊でした。


本書はTRPGに明け暮れる少年達の夏を描いたものです。他のブログで話題になっていたので、このことは知っていて、”ゲームの話自体じゃないし…”と少し買うのを迷ったのですが、安田均の解説を立ち読みをして購入を決めました。

安田均「どんな小説?」
秋口ぎぐる「ゲーム小説です」
安田均「ゲーム小説といってもいろいろあるからなぁ」
秋口ぎぐる「これまでにないものです」
(解説から引用)

僕は挑戦とか初めてとか型破りとかそういうことが好きです。これは買わなきゃいかんと思って買いました。


なんだかこの本を読むと昔の話をしたくなってしまいます。まず、夏。TRPGは夏やるもんです。あっついなか男ばっかり集まって一つの部屋に閉じこもる…。僕はよく友達のうちでやりましたけど、今考えれば親御さん心配しますね…あの部屋コンピュータのゲーム機器無かったし、部屋こもって何してるんだろうと疑問がわきます。この男くさい熱さがたまらないんですけどね。


本書では主人公とその友達がよくTRPGをしているシーンがでてきますが(…というか大半してるような気もしますが…)、内輪の時のGMって今オンラインでやっているときと全然違う感覚でやってたなぁっていうのを思い出せました。懐かしくて元気がでます。内輪でやるときには”あいつにはこの前ああやって突破されたから、今回は逆をついてやる!”とか、変なこだわりでシナリオ作ってるんですよね。そういうのも楽しかったなぁ。
僕は今ちょっとかわいそうだと思うのは、内輪でTRPG遊べない環境にいて、初めて遊ぶTRPGが、オンラインで公(内輪でないということです)のものの場合、ちょっと思いついた設定とか、アイテムが出しにくいですよね。一回やってみれば、そういったアイテムでバランスを崩すことが結局おもしろさを損なうことがすぐわかるんですが、なかなかそれが試せない。僕も昔はSF小説にでてくるもとネタは科学っぽい魔法をガープス妖魔夜行で使おうとするとか、なかなか無茶をしたものですが、そういうアホなことが試せる環境って貴重だったんですね…(あんたは今もアホなことを試し続けてるよ!って意見は却下)。


本書ではTRPGサークルに珍しく女の子が来て、主人公のキャンペーンに参加することになります。女の子に惹かれてTRPGから離れるのではなく、逆にTRPGのシナリオ作りに没頭していく主人公の空回りっぷりが、非常にほほえましいですね。僕の場合は残念ながらこういう経験はありません。自分のゲーム遍歴*1をまとめたときにも書いたのですが、僕がTRPGに一番没頭していたのは小学校高学年から中学校の前半なので、”女の子と付き合わなきゃ”とかそういう焦りはぜんぜんなく、男同士でつるむのが一番楽しいって感じでしたね。バレンタインで大きなチョコをもらっても、義理チョコだと思って、全員に同じものを返してしまうようなにぶちんでした。はぁ〜もったいなぁなぁ…昔の自分もっとしっかりしてくれよって感じです。実は今でも本質は変わってなくてやっぱり男同士でつるむのが楽しいんですけどね…orz。あっ男どうしで絡むわけではないですよ、別に男色家ではないのです。


今回感じた懐かしさの背景には出てくるゲームの名前が強く影響しています。ロードス島戦記ソードワールドガープス・ルナル、バトルテック…、海外ものは全然分かりませんでしたが、これらこそが僕らがやっていたTRPGです。そして、ライトファンタジーばっかり読んでて指輪物語とかそういう古典の名作を読んでない主人公とか、すごく視点が近いです。1990年代初頭、TRPGをしていた全ての少年達に向けて贈られた型破りのゲーム小説、お勧めですね。