ダブルクロス・リプレイ・オリジン 矢野俊策/F.E.A.R.

ダブルクロス・リプレイ・オリジン 偽りの仮面 (富士見ドラゴンブック) ダブルクロス・リプレイ・オリジン 残酷な人形 (富士見ドラゴンブック) ダブルクロス・リプレイ・オリジン―破滅の剣 (富士見ドラゴンブック)

ついにオリジンシリーズ完結しましたね。
いつものことながら、GMの要求といいPLの技術、モティベーションといい非常に高度で、こんなセッションしてみたい…と身の程知らずにも思います。


まずは読み物としての感想ですが、このシリーズのテーマは「子供が大人になる」ということだそうです。この4巻を通じて、UGNチルドレンが”自分の生き方を決める”様が非常にドラマチックに描かれていると思います。GMの準備はもちろん大変だったでしょうが、GMは考えるのに時間の制限がありません。PLはリアルタイムで事件が進行するという時間の制限があるなかで、自分の態度を決断しなくてはならず、このようにすばらしい結論を導き出すのは並大抵のことではないのではないでしょうか。正直、この未来の絆のボスの論理に対抗する理屈というのは実はこれしかないと思われるので、予想ができてしまったところが少し不満ではありますが、その理屈をPCの経験を踏まえ、PCの言葉でちゃんと言っていることが重要で感心いたします。


次にゲームとしての感想です。これは小説ではなくリプレイなので、やはりこの観点からも言及が必要かと思います。そもそもダブルクロスは物語作りとルールが密接に関連しているTRPGのシステムです。誰とどのようなロイスを結び、それをどのタイミングでタイタスとして使用するのか、それを決めると自然にドラマチックな物語ができていきます。
本シリーズのGMはこのダブルクロスのシステムデザイナーでもあり、物語作成とルールの融合に非常に気を使っていると思います。例えば、偽りの仮面ではかなり突飛なエフェクトをモルフェウスソラリスで説明し、残酷な人形ではクライマックスフェイズ後に残っているロイスで結末が変わると宣言したり、破滅の剣でのボスのエフェクトの演出が主人公と対応していたり、未来の絆ではトリックの説明にDロイスを用いていたり…いろいろです。ちょっと拡大解釈があったとしてもルール上の説明があると、納得いきやすいですね。


まとめますと、このリプレイはGM、PL共にモティベーションが非常に高く、妥協のない作りになっています。その結果シナリオに緊張感があり、GMが考えぬいたテーマに対してPLが高度に答えるという理想的なリプレイになっていると思います。シナリオのネタとしては普通のルール解釈を超えた大げさなトリックが多いですが、それでもどういうルールの延長線上にあるのかあきらかにしていて、説得力を与えています。ダブルクロスというシステムのポテンシャルを遺憾なく発揮したすばらしいリプレイシリーズだと思いました。