シフト うえお久光

シフト ―世界はクリアを待っている―

シフト ―世界はクリアを待っている―

これは声を大にしてお勧めしたいシリーズです。

僕はうえお久光悪魔のミカタシリーズ*1が大好きで、今でもライトノベルで一番おもしろかった作品だと思っています。その著者が送る超硬派(なんてたってハードカバー!)な大作です。


しかし、それだけにネタバレなしでどのように面白さを伝えるべきか迷います。


簡単に世界観を説明すると、中高生がファンタジー世界と現実世界を眠る度に往復する二重世界ものです。このような二重世界物は、現実世界での関係とファンタジー世界での立場の違いが、衝突を生じさせおもしろいですね。最近ではブレイブストーリー*2などが思い浮かびます。


すこし話題がそれますが、前から言いたかったことなのでTRPGダブルクロスの追加ステージ、ロストエデンについての不満を少し述べたいです。ロストエデン*3ではMMO(Massive Multiplayer Online)RPGが舞台です。プレイヤーキャラクターはこのRPGに閉じ込めれていて現実世界への帰還を目的とします。こういった設定のため、二重世界ものなのに現実世界との行き来が出来ず、結局ファンタジー世界でダブルクロスを遊ぶだけのものになって、二重世界ものの面白さが生かしきれてない印象があります。ファンタジー世界での敵が現実世界の友人だったり、その逆だったり…そういう遊び方が自由に出来たほうが面白そうだと思うのですけど。今のところはこういうことをするためにはちょっとシナリオを練って、うまくするしかないですね…。オープニングフェイズをロストエデンじゃなくて現実世界にしてしまったりするとこういうことができるかもしれません。


すごく話が飛びました。シフトの感想に戻りましょう。
うえお久光の特徴は登場人物の思惑と行動にあります。何かをしようとするときストレートじゃなく、人をどう動かすのか、人のどう思われたいのか、そういうことを基準として行動するため、登場人物への感情移入がとてもしやすいです。各人の価値観にそったことを他人をうまく利用しようとする。その駆け引きが面白いですね。
あと…もう軽くネタバレになりまうのですが、うえお久光は”悪って何か?”ってことに非常に関心を持っていて、通常のヒーローとは変った、ダークヒーローものを書くのが上手いと思います。悪魔のミカタにおいてもそうですね。


ハードカバーで、一つも挿絵のないこだわりの一冊。かなりキャッチーさを損なっていますが、これで売れると判断している出版社のその自信に感銘を覚えます。1年ペースで出ているようで、次の巻が待ちきれないですね。