人は見た目が9割
- 作者: 竹内一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/10/01
- メディア: 新書
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僕はこの本を最初に手にとったときには、合コンとかで相手を決めるときは第一印象が一番重要で、そのためには第一印象に最も影響与える見た目をきちんとしましょうという本かと思いました。
または、最初の直感がなんとなく正しい*1みたいに、人の内面というのは結局外面に反映されていて、見た目を見ればいろんなことが分かるとかそういう本かと思いました。しかし本当の内容はすこし違うものでしたね。
この本の内容は背表紙に要約されていますので、後半を引用します(最近このパターン多いな…手抜きだ…)。
すべてを左右している「見た目」だった!
顔つき、しぐさ、目つき、匂い、色、温度、距離等々、私たちを取り巻く言葉以外の膨大な情報の意味を考える。心理学、社会学からマンガ、演劇まであらゆるジャンルの知識を駆使した日本人のための「非言語コミュニケーション」入門。
まさにその通りの本なのですが、僕が誤解する原因となったのは「見た目」って言葉の使い方でしょうね。
顔つき、しぐさ、目つき、匂い、色、温度、距離等々って”見た目”ですか?匂いって明らかに見た目じゃないでしょ。
見た目って言ったとき僕が一番先に連想するのは服装なんですが、服装の話はネクタイするしないとかそれぐらいであまりたくさんのページが割かれているわけではないですね。
服装の話じゃないのが少々残念だったのですが、本書の内容は納得のいくものでした。特に筆者は漫画(哲也 雀聖と呼ばれた男)や演劇(戯曲 星に願いを)を仕事にしているだけあって、表情やしぐさがどんな印象を与えるのかについてはたいへん詳しいです。
ただ、文章で物事を説明するのに慣れてないと感じることもありました。
少し話が飛びますが、僕はプレゼンテーションの技巧の本って好きなんです。なぜなら、その本そのものがそこで解説されているプレゼンテーション技巧を駆使して分かりやすく書いてあるからです。
しかし、一方本書は「非言語コミュニケーション」に関して言語で説明するという難しさを抱えていると思います。たぶん、実演して見せてもらえば一目瞭然なことを、がんばって論理づけしようとしているのですが、あまり成功しているとはいえません。例えば、このタイトルである”人は見た目が9割”なことの根拠ですが、
アメリカの心理学者アルバート・マレービアン博士は人が他人から受けとる情報(感情や態度など)の割合について次のような実験結果を発表している。
- 顔の表情 55%
- 声の質(高低)、大きさ、テンポ 38%
- 話す言葉の内容 7%
とこれだけです。どんな実験なのかや、数字の根拠についてまったく言及がありません。これではこれを事実として信じるかどうかは”アメリカの心理学者が言っている”ということのみから判定しなければなりません。何かを考察するときは、何をファクト(事実)として持ってきて、それに対して私はこう考察するという形をとるはずですが、「誰誰が○○と言っている」ということをファクトとして持ってくる場合、誰誰ってのが誰なのか知らなければ説得力はないですね。実験の内容が複雑すぎて説明したくないときなどは、論文引用数が多いとか、一流の科学雑誌に載っているとかそれなりに権威付けをするって方法もあります。学者はけっこうなんでも言い出しますからね。たんにそういう学説があるっていうだけなら、探せばいくらでもあることでしょう。
本書の扱っている内容というのは新書という形で出すものではなかったのかもしれません。例えばDVDとかでだせば、そんな実験データなどを待たずとも、一目瞭然の説得力が出るのではないかと思いました。
*1: