他人を見下す若者たち 速水敏彦

他人を見下す若者たち (講談社現代新書)

他人を見下す若者たち (講談社現代新書)

タイトルや帯をみて危機感を覚えて買いました。
絵じゃ読めないかもしてないので帯を引用すると、

「自分以外はバカの時代!」

  • 自分に甘く他人に厳しい
  • すぐいらつき、キレる
  • 「悪い」と思っても謝らない
  • 努力せず成果が欲しい
  • 無気力、鬱になりやすい

この中から自分に甘く他人に厳しい、無気力、鬱になりやすいあたりが当てはまるかなぁと思ったんです。


この本のいいところは著者の主観だけじゃなくて、アンケート結果などをなるべくだそうとしているところです。もちろんそういうものの結果の解釈や集計法の問題はむずかしいのですが、この手の「近頃の若者は○○な傾向がある」という意見の場合、これがなければほんとに単なる主観になってしまいますからね。そういう意味ではこの本の役割は大人たちが感じている”なんとなく”に具体的なデータを与え、それが事実なのではないかという主張することにあるのだと思います。


しかし、それでもやはり不十分だと思った部分もあります。
本書の論旨は一言で言えば、「自分を肯定するために他者を否定する心理的カニズムが若者に働いている」ということです。経験に基づいた自己肯定を良しとし、他者を否定することにより相対的に自分を肯定するのを悪しとしてます。しかし、他者を否定することにより相対的に自分を肯定するというのも結局は経験に基づいた自己肯定なのではないでしょうか。このあたりの区別ははっきりしないと思いました。


”自分にもあてはまるかも、気をつけなくちゃ!”っていうのが本書を手にとった理由だったわけですが、読んでいくうちに僕はちょっとあてはまらないかなぁと思い直しました。ここで言われているのは、”他人に厳しい”って部分の問題点が主です。僕は自分に甘いですが、他人にもわりと甘いはずだと自分では思っています(たぶん)のできっと大丈夫なのではないかと…。
ただ、それでもここで言われているような若者にならないように気をつけるのは意味のあることです。しかし、じつは解決法は方向性が示してあるだけで当たり前のことが書いてあるように思いました。このあたりは少々不満ですね。
なかなかショッキングなタイトルで、話題になったとは思うのですが、解決法の充実がなければいたずらに不安を煽るだけかもしれません。こういう本を読むことで、自分にそういう傾向がないかどうか疑い、気をつけていく人が増える効果はあるのかもしれませんが、そもそも「僕は他人を見下してないだろか…?」と不安や疑問に思う人は、既に気をつけている人です。結局、効果は薄いかもしれませんね。