天体の回転について 小林泰三, KEI

天体の回転について (ハヤカワ文庫 JA コ 3-3)

天体の回転について (ハヤカワ文庫 JA コ 3-3)

タイトルに心惹かれて読んでみましたけど、良いSFでしたね。本書は短篇集で以下の作品が収められています。

  1. 天体の回転について
  2. 灰色の車輪
  3. あの日
  4. 性交体験者
  5. 銀の舟
  6. 三○○万
  7. 盗まれた昨日
  8. 時空争奪

どれもあまりハッピーエンドとは言えないお話なのですが、そこがまた味わい深いですね。

表紙の絵は今回KEIが描いていますが、たぶん天体の回転についてに出てくる軌道エレベーターの中のガイドホログラム、リーナでしょうね。この作品は爽やかな作品でこういった表紙もありですが、全体の雰囲気は結構硬派な感じですので、初めて読む人はこの表紙とのギャップを感じるかもしれませんね。この作品はそこまでとんでもない科学を使っているわけではなくて、ニュートン力学でも分かるちょっとした不思議を素材にしていて好感を持ちました。


その他、ロボットと人間の関係を風刺した灰色の車輪、人間の本質は記憶なのか、体なのかを惑わせる盗まれた昨日、クトゥルフテイストで気持ち悪さを感じながら荒唐無稽さに笑える時空争奪、どれも面白い作品でして、著者のファンになってしまいました。