ユーザータイプ主導でゲームデザインを考える
「ヒットする」のゲームデザイン ―ユーザーモデルによるマーケット主導型デザイン
- 作者: Chris Bateman,Richard Boon,松原健二(監訳),岡真由美
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2009/09/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「ヒットする」のゲームデザイン-ユーザーモデルによるマーケット主導型デザイン-(原題:21st Century Game design)がすごく面白いです。
今までのゲームデザイン*1の理屈というのは、ゲームというのは何が楽しいのか、ということに着目して話を進めてきたのではないかと思いますが、この本のアプローチでは、まずユーザーの趣向を場合分けし、その後各ユーザーのタイプがどのようなゲームを好むのかを明らかにするという方向で述べられています。
TRPGでもユーザーのタイプ分けは行われてきましたが、大事な分類がかけていたり、細かい違いに着目しすぎていたりとあまり整理が進んでいる状態ではないと思います*2。またそのタイプ分けをどうゲームデザインに生かしていくのかという視点にも欠けています。
この手のもので一番有名なものはGNS理論ですかね*3。しかし、現状GNS理論を生かしてゲームデザインがされているわけではありません。ナレーションやシミュレーションが好きなユーザーがいるから、ゲームよりもそれを優先しようという試みはないのではないでしょうか。
また、中でも悪名高いのは馬場論のキャラクタープレイヤーという分類でしょう*4。ただしマーケティングとしてはキャラクタープレイヤーにあったゲームを提供するというのが正解であり、ユーザーの趣向を変更するような訓練を行うというのは、それとは真逆の方向性です。
関連してTRPGにおける上達というのも、今まで繰り返し議論されて来ましたが、ユーザーモデル主導のデザインでは、上達指向のユーザーとそうでないユーザーがいることから出発し、それぞれのタイプののユーザーにどのように楽しみを提供していくのか建設的な議論が展開されています。
こうした意味で、今までなされてきたTRPG論考では納得いかない部分などが本書ではかなりきれいに整理されます。TRPG論考を趣味にする奇特な方には是非読んでいただきたい一冊です。
ちなみに、本書の新規性を強調するために意図的に説明しなかったのですが、D&D4thのダンジョンマスターズガイド*5はプレイヤーの傾向に合わせたトラブル回避のやり方などが詳しくのっており、既にユーザーのタイプに合わせたゲームデザインが一部始まっていることをつけ加えておきます。
さて、本書の具体的内容についても一応触れる気はあるのですが、忙しさとの兼ね合いで僕にはできないかもしれません。それでも、期待せずにお待ちいただいても良いですし、どうしても気になる方はご自身で買ってお読みいただければと思います。
*1:今回はゲームデザインという言葉の定義はしませんが、ゲームの作成に関わる幅広い行為全般のことを指すと大まかに考えてください。TRPGにおいてはもちろんゲームマスターがデザインすることもあるでしょうし、場合によってはそれ以外のプレイヤーが行うことすらあり得ます。
*2:テーブルトークRPGのプレイスタイル - Wikipedia
*4:http://www.scoopsrpg.com/contents/baba/baba_19980907.html