犬憑きさん 上下  唐辺葉介  Tiv

犬憑きさん 上巻 (スクウェア・エニックス・ノベルズ)

犬憑きさん 上巻 (スクウェア・エニックス・ノベルズ)

独特な筆致でノベルゲームに新風を吹き込んだシナリオライター瀬戸口廉也と噂される新人ライター、唐辺葉介の新作です。

”動物憑き”を取り扱っていてよく見かける学園+妖怪ものというジャンルですね。最近のもので印象に残っているのは西尾維新偽物語とか、峰守ひろかずほうかご百物語でしょうか。

よく見かけるのにはやはり理由があって、学園と憑き物って相性が良いんですね。なぜ相性が良いのかたぶん読んでみればわかるんじゃないかと思います。要するに青春というか子供のといべきかそういう多感な時期の自意識を憑き物として表現すると、その心理も共感できるしファンタジックなおもしろさも加わるんですね。

この唐辺葉介犬憑きさんは、他の作品に比べるとそのテーマに深く踏み込んだ作品でした。前作のプシュケとはだいぶ雰囲気が違いますが、作品に対する真摯な取り組みが伝わってくる良作であったと思います。

この作品でもう一つ特筆すべきなのは、あとがきの書き手に編集者を起用していることです。おもしろい本をつくりたいという熱意が伝わってくるあとがきでした。出版不況が叫ばれる中でも、そうした熱い思いを失わず、がんばって良い本を作っていって欲しいと思います。