ダン・サリエルと白銀の虎 (神曲奏界ポリフォニカ) あざの耕平, カズアキ

神曲奏界ポリフォニカ ダン・サリエルと白銀の虎 (GA文庫)

神曲奏界ポリフォニカ ダン・サリエルと白銀の虎 (GA文庫)

若き音楽家の苦悩をテーマにしながらも、華やかな雰囲気で楽しく読める名作。

ポリフォニカの新シリーズですが、ネットでの評判は非常に高いです。僕も楽しく読ませていただきました。

ポリフォニカの世界で描かれるのは、精霊と人間の関係です。全てのシリーズを読んだわけではありませんが、どのポリフォニカシリーズにもこの関係がメインテーマになっていると思います。

さてその精霊と人間との関係を司る大きな手段が”神曲”と呼ばれる音楽なのですが、ふと思い返してみればこれまでのシリーズでは、この音楽そのものに対する葛藤を正面から描いてはなかったのではないでしょうか。このダン・サリエルのシリーズは、主人公を若手音楽家に設定し、音楽に対する葛藤をメインテーマにした堂々とした作品です。大衆に支持されながらも、あるいみ”俗”という評価を受けるダンの悩みが、深く真摯で心を打ちます。

しかしそういったシリアスな面を持ちながら一方、このダンの性格破綻者ぶりや彼の契約精霊、モモのドジッコぶりなどには笑わせてもらえました。モモとダンの関係は心温まりものがありますね。コジやアマディアといった他の登場人物も魅力的で、しかもダンのコンプレックスをよく引き出すように配置されています。

ポリフォニカのシリーズとしては後発ですが、あるいみ他のシリーズよりも続刊が楽しみになる一冊でした。