“文学少女”と月花を孕く水妖 野村美月, 竹岡美穂

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)

文学少女の外伝です。物語の時系列と刊行順は少々前後するのですが、遠子先輩と心羽君との関係に伏線を残すので、話の展開的にはこのタイミングがちょうどいいですね。次回の最終巻(?)では、遠子先輩の正体と二人の関係にスポットが当たるはずです。

文学少女”の伝家の宝刀はミステリにおける”探偵の推理”を、”文学少女の想像”という形で提供することです。必ずしも証拠があるわけではないものの、説得力があります。今回も想像が冴え渡っていました。

ミステリでは、犯人の動機を当てることをホワイダニットと呼びますが、それって実は”本を読む”という行為と非常に近い行為なんですよね。本にはテキストが書いてあり、それを読者が登場人物の行動の理由を想像しながら読みます。その理由と自分の体験に共通点が多ければ共感しやすい物語となるでしょう。行為から感情や気持ちを想像するという意味では、探偵と本読みは同じことをしているわけです。

今回、文学少女では泉鏡花の著作を取り扱います。ほんとは原作を読んでいたほうがこういう話はおもしろいので、文学少女を読むたびに原作を読まなきゃなぁと思うのですが、たいていそこまではいかないですね(笑)。さて今回のテーマは刹那と永遠でしょうかね。リトルバスターズの美魚シナリオを少し思い出しました*1。このシナリオでは若山牧水の詩、”あゝ接吻 海そのままに日は行かず 鳥翔いながら 死せ果てよ今”が引用されるのですが、こういう気持ちの話ですよね。良い話です。

そういえば、ダヴィンチで昔の文学を現代風にアレンジしたら良い作品ができるのではという話がでてきましたが*2文学少女が出てこなかったのは残念ですね。これこそ古典文学を現代風にアレンジして、好評を得ている作品なのに。

文学少女、もっと評価が高くなると良いですね。これからも応援しております。