”物語を経験させる方法”が非常に参考になるのでレビュー
いまいち誰が喜んでるのか分からないTRPGの小難しい記事をまた書いちゃいます。
”物語を経験させる方法”は『The Game Design Reader』の一部のレビューです。TRPGについて直接語られたものではないですが、非常に役に立つと思います。
Marc LeBlanc "Tools for Creating Dramatic Game Dynamics"
さてこんな論考の記事を”役に立つと思います”とか言って始めてしまった以上、まずは実際の遊びに役に立ちそうなところから。
このあたりの問題意識と同じで、どうやったらプレイヤーが面白いと思う課題が作れるかという問題です。
不確実性と必然性が必要だという話ですが、それぞれを具体的に書いていきましょう。
勝敗の不確実性
勝負の結果を分からなくするテクニックです。
TRPGではよくダイスなどのランダマイザを使って戦闘しますが、これは不確実性を増すためということができますね。
cybernetic feedback system(negative/positive)
要するに負けているほうが有利になるような構造ということでしょうか。FEARのゲームではHPが負になった時、死の危険は増すけれども戦闘能力は増すようなギミックを仕込んでいるものありますね。
escalation(段階的拡大)
リンク先では、掛け金があがっていくような感じとあります。アリアンロッドでは自分のくらったHP分をあいてに当てるスキルがありますね。あと式神の城ではなんと、防がれた絶技よりMP消費が低い絶技は効かないというルールがあるらしい。どんどん派手な絶技を打たざるを得なくなるわけですね。
hidden energy(隠されたエネルギー)
どうしてもアリアンロッドの例が浮かびますが、1シナリオに何回か使えるスキルたちですね。
fog of war(戦いの霧)
全体像が見通せない感じですね。中ボス戦ではその次に控える大ボスの強さがわからず、資源をけちるせいで案外苦戦します。
decelerator(減速器)
自由を奪われる、うごけなくなったりするものかな。ファンタジーRPGの魔法でよくある。有名なのはスパイダーネットとか?
cashing out(清算)
一度勝ったほうが次のゲームも有利になるような状況だと、勝敗の不確実性が薄れるので一旦初期位置に戻したりすること。TRPGではあんまりないかなぁ。
必然性
必然性とは切迫感のことらしい。今じゃないと倒せない感じを表す。
literal
時間制限。ダブルクロスの侵食率などはいい時間制限なのでは。
nonrenewable resources=復活しない消費リソース
要するにMP。
nonreversible processes=やり直せないプロセス
例えば行動順とターンを決めて行動させることだろうか。
Michael Mateas and Andrew Stern"Interaction and Narrative"
PLとPCの関係について。
季刊RPGvol 4.のウチガネさんとまったく同じことを言っている。演劇関係者にとっちゃ常識的なことなのかな。キャラクターの性格から行動を決めることと、PLやGMの意図(プロット)どおりにキャラクターを行動させること、どちらか一方を演技だと思って論を進める方が多いと思いますが、この両方が演技だという話がされています。
この二つの演技のバランスがとれている状態が気持ちの良い状態です。PLとPCの距離に関する話題はこのあたりが正解っぽいですね。
Henry Jenkins "Game Design as Narrative Architecture"
物語とゲームの関係について。物語を生むゲーム環境についての考察だけど、このまえ書いたRPGのシナリオ分類にも通じる話ですね*1。このあたりはなかなか難しくて僕にはうまく解説できませんねw。
GMが時系列で一本道なシナリオを作ったとしても、個人にしか還元されない独自な物語の体験が生まれるのはなぜか。ホワイダニットって何なのかについては長くなりそうなのでまた今度*2。
そういえば、http://www.igda.jp/modules/xfsection/article.php?articleid=49に勝敗のあるゲームと勝敗のないゲームについての論文がでていましたが、鏡さんのしようとしている話がこれに近そうなので期待しています。ビデオゲームではけっこう簡単に勝敗のない遊び方ができますが、多人数で行うのは難しそうです。