ダブルクロス・リプレイ・トワイライト3さらば愛しき快男児 田中天

熱き侠(おとこ)の冒険譚、これにて完結。

1巻の感想 2巻の感想

漢と書いて”おとこ”と読むのもいいですが、侠と書いて”おとこ”と読むのもいい感じですね。快男児、天芸寺大悟らの活躍を描いたトワイライトシリーズも3巻で幕を閉じることになりました。目をつぶるとクレオパトラ・ダンディの顔が浮かび上がってきますね(2巻参照)。

まぁそれはさておき、トワイライトシリーズ全巻を通じての印象をまとめるとすれば、膨大な史料やGMとPLの背景知識に支えられたハイレベルな物語ということになると思います。人物や地名などの固有名詞の脚注の数は、相当なものに及び、もちろんこれはフィクションでエンターテイメントなんですけど、実際の戦争を元ネタにしていることをどこか忘れない真剣さがあったように思えました。

もちろんお馬鹿なところは極端にお馬鹿で荒唐無稽なのですが、そういうおふざけすらも、ある意味戦争の馬鹿らしさを描くという真面目な気持ちが底のほうにあるように個人的には思われました。

そういう、非常に凝った物語の中で2巻ではクレオパトラ・ダンディという強力なキャラクターで読者を楽しませたり、作品の魅力を磨いていったシリーズでしたね。

TRPG的な意味では、情報収集や、潜入・移動などに、ふんだんにエフェクトや判定をもりこみ、ダブルクロスで軽視されがちな戦闘以外の局面でのエフェクトの運用例を示していることに価値があったと思います。

さて、全体的な感想は以上でこの3巻の感想に移らせていただきます。今回の第一話、”快男児故郷に戻る”では大悟に焦点が当てられ、日本を舞台にお話が展開します。GMの言い方でいうと、”時代劇のほろ苦さ”みたいなものをうまく醸し出した話でした。非常に演出が渋く、かっこいい話でしたね。また第二話、”快男児よ永遠に”では最終話にふさわしいスケールで物語が展開され圧巻です。ただ、僕はこの最終話少し物足りないところがあるので、それはネタバレ感想のほうで、お話することにしましょう。

本編の感想は一言でいうと”よくできている”というものです。クレオパトラ・ダンディみたいに、つきぬけたおもしろさや、謎の場の盛り上がりはみせないものの、細かい演出など凝っています。それを一つ一つ話だすと細かくなってしまうので省略しますが、そういう意味で質の高い話になっているといえます。

まとめ

GM田中天さんは、PL時のつきぬけたおもしろさから、つい爆笑を期待して読んでしますのですが、本シリーズは膨大な神話や歴史を題材に凝った物語が展開されています。もちろん爆笑の荒唐無稽さもよく顔をだし、笑わせてくれることは間違いありません。完結お疲れさまでした。

ネタバレ感想

さてこっから先は個人的に気になった点です。未読の方は見ないことを薦めますよ。


僕は最終話にどうも物足りなさを覚えて、なんでかなぁと考えていたのですが、たぶんラスボスにあるのだと思い当たりました。

端的に言いますと、ラスボスの悪と主人公の正義がいまいち噛み合ってないことが不満です。

今回ラスボスは計算結果から人類の未来に希望なしという結論を下し、自分がふさわしい世界を作ることを決定します。その過程で全人類を滅ぼすことを決定します。

今回ヒロインは全世界となるわけです。

しかし、僕が思うに快男児の正義っていうのは、全人類なんていう把握しきれないものより、友人との約束であったり、未来ある子供だったり、そういったものに裏打ちされたものなのではないでしょうか。

だからラスボスの”理屈”に対するPCたちの”反論”がいまいちPCの境遇に裏打ちされてない気がするんですよね。

あとがきでGMが述べているように実はこの話の最大の焦点はファウストの処遇にあり、そこでは大悟らしい決断が見えておもしろかったです。だから、実はこの話ってある意味ラスボスがどうでもいいんですなw。

ファウストの処遇を決めるところにクライマックスフェイズをもってくるような構成になればまた違ったのかなぁと思っています。