リトバス日記3日目

ネタバレですよ。気をつけて!主に西園美魚シナリオ。同じ日にリトバス日記の2日目と3日目があるって…あんたリトバス廃人だろうっていうつっこみは、ご遠慮願いますw。
リトバス日記1日目 - ブレーキをかけながらアクセルを踏み込む
リトバス日記2日目 - ブレーキをかけながらアクセルを踏み込む

さて、今回もミニゲームは抜かしてさっさと美魚シナリオへ。
どうして美魚かってそりゃああんた、あの毒舌っぷりにまいったからですよ。
僕はけっこう毒舌吐かれる好きなんですよね。マゾヒスト。

まぁそれはともかく美魚シナリオですが、これななかなかナイスでした。
自分にしか見えない友人や人に忘れられるっていうガジェットはkeyのお家芸ですね。oneの問題意識の発展です。

基本的にはその見えない友人っていうのは自分の子供心の象徴だったりするわけで、その人とどうおさらばするのかっていうのはオタクの成熟の問題をあらわしており、オタクの関心のど真ん中なわけです*1
おさらばしない場合には、大人になれず”永遠の場所”に消えてしまい人に忘れられる…そして、それを回避するのは他者とのつながり。まさにONEですね。

それで、どこが発展しているかという話ですけど、ONEでは自分が消えるほうだったのが今回は自分が引き止める立場になりましたね。もうオタクは成熟拒否の話を昔話として読める余力がでてきたってことなんじゃないかと思います。

テーマの発展はそんなところですけど、シナリオ自体の運びはすごくうまくてこれはリトバスやって良かったと素直に感心しました。”白鳥は哀しからずや空の青うみのあをにも染まらずただよふ ”という若山牧水の詩をこのテーマに対して持ってきたっていうのがまず良いです。ボーイミーツガールで問題にされるのは”他者”ですが、他者を問題にする前にはまず自分の”孤独”が問題にされるはずですね。そもそも個がなければ他者もなにもないのです。孤独を綺麗な情景とともに歌い上げているこの詩は、ヴィジュアルノベルで取り扱うには的確な素材だと思いました。海・空・雲…すごくkeyが得意としているものたちですよ。ちなみにたぶん昔からの仲間というガジェットを持ってきたこのリトルバスターズではきっと”孤独”っていうのは重要な懸案事項ですね。

さらに次の詩で”あゝ接吻 海そのままに日は行かず 鳥翔いながら 死せ果てよ今”を取り上げて”今、絶頂の瞬間の永遠性”を持ち出したのですが、これもシナリオ中できれいにおさまっていました。ここでは海も空もまぁ似たようなもんなのですが、青い空の中の白い雲に”他の人には見えない友達”を例えたのもすごく優しいですね。そういった大人になるための、”失われるために生まれた移行対象達”…それらを忘れないでいられたらいいですね。あんまりこうやって”移行対象”なんて名前をつけるとそれで物語の深さをとりおとすこともあるんで、気をつけなきゃいけないんですがね。

さて、移行対象といえば僕がやったたくさんのギャルゲーたちのことを僕は忘れずにいられているでしょうか…。とりあえずこのシナリオをやってONEのこと…特に思い出したのは七瀬留美のシナリオですけど…を思い出せたのは、なぜだか幸せでした。ああやって過ぎ去ったお話のことをちゃんと思い出せたのはラッキーです。一度は分岐した川にもう一度合流できるなんて…すごく幸せなことですよ。

瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ
崇徳院

*1:オタクっていうのは今日日すごく広い意味を持つので特定しておいたほうがよいのですが、今回ギャルゲオタのことですね。ギャルゲオタってたぶん若い人にはそんなにいなくて…世代的にはかぎられてくると思います。