スプライトシュピーゲル 2 冲方丁

展開がヘビーすぎてこっちまでブルーになる小説です。

事件さえなければ、幸福な人間関係を築けるであろう優しい人間達が、思想に殉じつつ、利用されたりだまされたりして、簡単に死んでいきます。酷いもんですよね…。

このスプライトシュピーゲルでは、オイレンシュピーゲルのほうでちょい役だと思ってたヨーコ・イマムラのバックグラウンドがより明らかになりますが、モリサンの存在があるだけでヨーコっていう人物をぐっと身近に感じることができます。なるほど二つの物語をうまく使って多面的に世界を構築していますね。物事の片面しかみないことの”非情さ”がよく伝わってきます。まぁしょせん物事の全ての面など見ることはできないので、非情な読みをすることも悪くはないのですが。

ネガティブな話を続けても疲れるので、ポジティブに心打たれた部分の話をします。
最強のナマクラ、モリサンと乙(ツバメ)の関係が良いですね。よく大人が子供を書くのは難しいという話を聞きます。ここでは、乙はある種の単純さをもって描かれるのですが、この単純さとモリサンの大人のナマクラさがうまく対比されていて、良かったです。僕は好きですよ。

ちなみに文体の話でよく話題になるこの記号をふんだんに使った語り口ですが、筆者も大変な思いをしながら書いているそうです。あれは、文章からまどろっこしさを消してスピード感を出すためにわざわざ使っているんだと思いますが、漫然と書くとうまく書けないそうですよ。
オイレンシュピーゲルといいスプライトシュピーゲルといい読むとかなり疲れるんですが、それは文体以上に情報量の多さっていうのもあるかと思います。真剣に読まないとすぐ話からおいてかれてしますのですw。

それにしても、これはほんとに気が重くなりましたよ。ラノベを読んでこんなに気が重くなることがあろうとは。冲方丁こえ〜。