ジャストボイルド・オ’クロック うえお久光

ダークヒーローものの名手、うえお久光が”正義の味方”に挑戦した意欲作です。

大きすぎるテーマに振り回されている?

人類が電子機器と共生を始めた時代、目覚まし時計のアルと元ヒーローの探偵ジュードがナノ=ウィルス散布事件を追いながら、ヒーロー連続殺人事件の謎に迫っていく話です。バディ物ですね(対照的なコンビで物語を進めていく形式,buddyは兄弟とかそういう意味)。
ちょっと世界設定が込み入っていまして、上で述べたあらすじを理解できないと思います。実際の小説の中でも世界観の説明は回りくどく、あまり成功していませんね。

正義の味方

最初にも述べたとおり、このうえお久光は優れたダークヒーローものを書いてきました。その筆者が真正面からヒーローを描こうとしているのですが、筆者のこだわりがあるテーマのせいか、込み入ってしまっています。

依存

正義というテーマのほかに電子機器への依存というテーマもあります。依存の是非、愛憎を乗り越えて信頼関係が気づけるのかなどが問題にされます。

この2つがテーマなのはいいのですが、この2つのテーマの関係などもいまいち不明で、登場人物の出番のバランスなどがとれていません。伏線の回収の仕方なども綺麗とはいえないでしょう。
小説としての出来はいまいち…といわざるを得ないと思います。短編として書くにはテーマが大きすぎた(あるいは多すぎた)ようです。

しかし、そのように消化不足ではありながら、随所に興味深いポイントがみられました。
深く考えてみたいテーマなので、次の記事で書こうと思ったんですが…やっぱ難しいのでやめちゃいます。

まとめ

書きたいことが大きすぎて、まとめきれてない作品です。意欲作であることは間違いありませんが、注意して購入してください。

他の人の書評

軽く探した中では一番しっかり書かれた書評。もうちょっとよく知りたい方は読んでみるべし。