桝田省治に学ぶセッションデザイン

先日の記事、TRPGのシナリオ作成 - ブレーキをかけながらアクセルを踏み込むにて、RPGのシナリオ作成は映画や小説のシナリオ作成に比べて特殊だと述べました。

ゲームシナリオのドラマ作法”はいい本だと思いますが決定的に足りてないものが2つありまして、それは”ゲームのコンセプトをどうシナリオに反映させるか”ということと”シナリオのコンセプトをどうゲームに反映させるか”です。要は具体的なゲームシステムの話はしないで、シナリオの話はできないのでは?ということですね。映画や小説の書き方をゲームシナリオに応用する方法の限界です。

ゲームシナリオライターの仕事 名作RPGに学ぶシナリオ創作術”を読んで納得したのですが、RPGの場合、出発地点がばらばらですよね。”こういうゲーム、課題がしたい”っていうゲームや課題が思い浮かんでいる場合もあれば、”こういう話がしたい”とシナリオが思い浮かんでいる場合もあるだろうし、”とにかくこういうキャラが活躍する話”とキャラクターが思い浮かんでいる場合もある。どこを出発点にするかによってRPGの作り方は変ってくるはずなのに、そこのつまづきを拾ってあげる本や文章ってあんまり見ないですね。

僕も所詮素人なので、お勧めのシナリオ作成の方法なんて僕がぼやいたところで説得力もなにもないのですが、僕は物語よりもゲーム的に何がしたいのか決めるほうがTRPGには向いているのではないかと思います。

課題やテーマが決まっている場合

やりたい課題やテーマが決まっている場合は、次にそれを実現するシステムを見つけてきます。うまく探してこれれば良いですが、見つからない場合はなるべく特徴の薄いシステムに今回かぎりの設定を付け加えるのがいいでしょう。気力と根性があれば自作するのもいいかもしれません。

例えば、”戦闘のとき熱く叫んでもらえるようなゲームがしたい”のならば、RP評価があるシステムや、人間関係を記述するようなギミックを含むシステムを選ぶのがいいでしょうし、そこまでおおげさじゃなくていいのなら、いとうえいの断罪者の設定みたいに殺意を込めないと本当には殺せない敵とかそんな設定を付け加えてみると*1、PLが乗ってくれるかもしれません。最後にストーリーとしては十分に敵を恨めるような設定を考え出せれば良しです。
これはストレートな流れでしたね。

やりたい課題→システム→ストーリー
この順番でシナリオを作るとストレート

システムが決まっている場合

今度TRPGをやろうかって言った時、使用システムが決まっている場合が多いですね。その場合、その時点ですでに何が得意で何が苦手か決まってます。テーマや課題が決まっていてシステムを決めるのは楽ですが、システムが決まっている上でテーマや課題を決めるのはやや難しく、頭をひねるところでしょう。

一般的なファンタジーの課題の例はhttp://www.trpg-labo.com/modules/xfsection/article.php?articleid=38にあります。ここで挙げられている制限もうまくつけられるといいですね。ここには取り上げられてませんが、葛藤・決断してもらうっていうのも流行りの課題ですね。葛藤して決断してもらうための状況設定を作り出すのがGMの仕事です。何を葛藤・決断するのかはシステムや世界観に照らし合わせましょう。

課題を決めたらストーリを決めましょう。なぜそうやらなきゃいけないのかをでっちあげれば完成です。この順序を逆にして好きなシナリオを書いてしまうと、課題が自動的に決まってしまうのですが、それがシステムとあってないことが分かると修正が大変でしょう。まぁただでさえこの段階でのストーリーつくりはコンセプトの雁字搦めで大変です。このあたりをうまく助けてくれる本が欲しいんですけどね。

システム→やりたい課題→ストーリー
やりたい課題がシステムに合致しているかチェックが必要

とにかくゲームが先、ストーリーが後、これがお勧めです。やりたい課題にあったストーリーを考えるほうが、ストーリーにあった課題をゲーム的に面白くすることよりも、簡単だと思います。

まぁ僕の文章では納得できなくても、桝田省治のシナリオ作法”を読めば納得できるかも。

ストーリーが一番どうにかなる部分

僕のお勧めする作り方では常にストーリーを最後にまわします。それはストーリーが一番調整が利く部分だからでしょうね。このときのストーリーはうまくゲームが成立するように慎重にチェックしなくてはなりません。ゲームのストーリー作成とは、何もかも自由であることはかなり稀で、むしろいろいろな制限下で設定を調整してうまくつじつまを合わせることが本質なんじゃないかということです。
つじつまあわせは問題が千差万別なため、回答も千差万別、HOWTO本が作りにくいのもうなづけます。”ゲームシナリオのドラマ作法”で紹介されているようなシナリオありきで全体を作るとゲームの部分で躓きやすいんじゃないかと思います。注意してみてください。

やっと桝田省治の話に…

ここでゲームが先、ストーリーが後、こういうゲームの作り方をする代表格として桝田省治の登場です。TRPGの文脈で桝田省治の影響をはっきりと挙げる人は少ないと思いますが、この人ほどゲームのデザインがうまい人はいないのではないでしょうか。言っていることもすごく論理的で、努力すれば真似できるような気がするのが嬉しいですね。

http://www.linda3.co.jp/column/index.htmlに非常に面白いコラムがたくさんあります。是非読んでみてください。

ゲームは優柔不断なクリエーター向き説:これなんかお勧めですね。葛藤ものでGMが正解を容易するってなんかいまいちな感じがしませんか。どういう選択肢をとろうとそれがそのキャラクターの正解ですよ。

ドラマを生みやすくするシステム、その可能性TRPGでは今、がんばってこれをやってるんですけどwもう飽きちゃいましたか…。

計算式と格闘する日々TRPGでこれはやりにくいけど、人の金銭感覚はログだという話を聞いたことがあるし、なかなか興味深い話。

それでもストーリー主導のシナリオにしたい場合

これが難しいのでいろいろ述べてきたわけですが、それでもここに挑まないと成長はないかもしれないですね。ストーリー主導で作るなら”ゲームシナリオのドラマ作法”の通りに順を追ってつくるとストーリーは完成します。けしてこれもやさしい作業ではなく、作り手の善悪観やテーマの理解など、それはそれで難しい問題は山ほどでてきます。その上で、ゲームとしては”作者と同じ価値観をどうしたらプレイヤーが感じてくれるのか”に技巧をこらす必要あるでしょうね。”ゲームシナリオライターの仕事 名作RPGに学ぶシナリオ創作術”の重馬敬のインタビューによれば、人を共感させるのに必要なものは”ステップや段取り”だそうです。気持ちがどのように変化していったのかを丁寧に明らかにして、しっかりと変化をかくことがこつだそうです。

*1:○○をさせたいとき、○○しか効かない敵を出すのは非常に簡単かつ便利な方法ですね