ミミズクと夜の王 紅玉いづき
- 作者: 紅玉いづき,磯野宏夫
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2007/02/10
- メディア: 文庫
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表紙だけみてるとわからないかもしれませんけど、これは電撃文庫です。かなり作中の雰囲気を大事にしていますね。作中にも挿絵は1枚もありません。漫画的な挿絵をつけることも可能なんですけど、それを敢えてしないところに、編集者のこの作品への力の入れようが表れています。
この本を読むきっかけはとなりの801ちゃんのところでお勧めされていたことです*1。電撃文庫はしょーもない作品も多いですが、その新人賞である電撃大賞はライトノベルではもっとも大きな賞で、僕の好きな作品も何作かここから出ています*2。本作品はその第13回電撃小説大賞<大賞>受賞作です*3。
この話の魅力はさりげなく技巧的な構成ながら、テーマはすごくストレートなところにあると思います。話がまっすぐなのは共感を得やすいわけですが、いっぽう”ありがち”という印象も付きまといます。そこをうまく技巧的な筆力でカバーしている作品で、”正統派”だと思います。
あとはネタバレ感想です。
最初の数ページがまずものすごくうまいですね。
僕はあらすじなどの情報をまったく読んでいなかったので、主人公が人なのかほんとにミミズクなのかわからなくて、”どういうこと?”って思いました。このときは主人公の思考が少々人間離れしているんですよね。
「あたしのこと、食べてくれませんか………!?」
も非常に印象的でしたし、ものすごく良いつかみです。
3章まででだんだんフクロウとミミズクは仲良くなっていき、ミミズクがどうしてそのような思考をするのかうまく説明されます。このあたりの説得力も十分です。
3章では人々がミミズクを救い出すというなんか嫌な予感をかもしだして…「おいっ余計なお世話だから放っておいてやろーぜ!」なんて思いながらも、物語は無情。4章では連れ戻されてしまいます。ここはもうすこしひっぱるかと思っていたので、”あれ?まだ1冊の半分くらいしか来てないけど…”と不思議に思いました。
その後はいろいろあって最後にディアに助けを求めるシーンが心に残っています。あの死にたがりだったミミズクが、人に助けを求めるのかと。ディアも父親に認められたいとかそういうのもいろいろあったと思いますが、ミミズクのお願いはそりゃ叶えてあげたいですよね。
救出が2回あるのはなかなかw。
…それで最後はわりとご都合なハッピーエンドですが、あそこに残っている人で悪い人はいませんからね。実はちょっと物足りないものもあるんですが、これはこれでいいでしょう。
作者は21歳とまだまだ若く、今後の作品に期待しています。
*1:http://indigosong.net/2007/03/post_41.html
*2:電撃大賞で僕の好きな作品は第一回「クリスクロス」 第4回「ブギーポップは笑わない」 第8回「悪魔のミカタ 魔法カメラ」 第9回「キーリ」(キーリはそこまで好きでもないんだけど…)第12回「狼と香辛料」