DDD 奈須きのこ

DDD 1 (講談社BOX)

DDD 1 (講談社BOX)

奈須きのこの新作ですね。ファウストに連載されていたものに一話書き下ろしが加わっています。


ところで、この講談社BOX…装丁を凝るのは読者としてはうれしいんですが、あんまり特殊な大きさにされても保管に困るんですよね。空の境界*1とおんなじノベルスで出してもらえれば並べられるのに。それにこのBOXは装丁が凝ってそうでべつに凝ってない。箱にシールが張ってあるだけですし、中の本の表紙は青一色です。これからもこのBOXで本を出し続けるなら並べてみてもいいかもしれないけど、今のところはいまいちですね。今のところこのBOXシリーズで読むかもしれないのは、西尾維新化物語舞城王太郎くらいか…。でもノベルスでだしてもらえるならそっちのほうがいいなぁ。あと編集長太田克史のシールはいらんです、「この人は、やっぱ天才だわ!」って、そんなこと分かってるし、分かってない人にはこの太田って人こそ誰って感じじゃないかと。


どうも装丁がいまいち気に入らないので(イラスト こやまひろかずに罪はないんですが)、ネガティブな感想から入りましたが、内容は面白いです。週単位ではベストセラーになっているのではないかと思います。空の境界といい、さすが奈須きのこ、瞬間最大風速は強いですね。
DDDというのはDecoration Disorder Disconnectionの頭文字みたいです。いつもの奈須きのこ節で非常に個性的かつ精密な設定です。また、これもいつものことですが、奈須きのこは○○というより××みたいに似たような言葉を使いながらそのちょっとした意味の違いをうまく使ってよく雰囲気を伝えてきます。その上青年期の葛藤やコンプレックスをうまく噛み砕いて話しにとりこんでいるため、病的で異常な人間にもうまく感情移入できるよう配慮してあると思いました。


最後に事件の年表がついているのですが、まだ公表されていない作品のタイトルも含まれているので、それを順当に消化して終わるとなると、最終的には2巻か3巻くらいの短編になると思います。プロットも決まっているなら出る時期は早いでしょうし、楽しみですね。

追記

アマゾンのレビューを見ると、精神病の扱いがまずいのではという意見が数件ありました。
なるほど、いままでの奈須きのこは吸血鬼とか英霊とかフィクション中のフィクションを書いていたけど、今回は精神病を持ち出したので、ちょっとデリケートな問題に触れたみたいですね。奈須きのこの作風を知っている人がこのDDDを読む分には何の問題もないと思うけど、何もしらず、この作品から手を出す人には誤解を与えるかもしれません。あんまり、そういうのに配慮した表現をしちゃうと勢いがそがれちゃうと思うので、この問題は読者のほうで気をつける必要があるんだと思います。なんにしろ、フィクションの作家で、そんなことを指摘されるようになろうとは…。奈須きのこがほんとにメジャーな作家になったことの証でもあると思いました。