ひぐらしのなく頃に礼 賽殺し編 07th Expansion

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ひぐらしのなく頃に本編の方は前作(ひぐらしのなく頃に解 祭囃し編 感想はこちら)で終わっており、これはファンディスクという扱いですが、賽殺し編は本編の後日談で、これをもって本編終了ともいえそうです。
このファンディスクには他に昼壊し編、罪恋し編が収められています。どれも短編ですが、部活パートが好きな人には特にお勧めの作品ですね。


この先は賽殺し編の紹介というよりも感想となりますので、そんなにネタバレでもありませんが、終了してからお読みいただいたほうが作品の魅力を損ねないと思います。

本編の感想に入る前に二つほど抑えてほしい事項があります。

  1. 僕があの娘を選んじゃったら他の娘はどうなっちゃうんでしょう問題
  2. ループものはプレイヤーが感情移入しやすい

まぁ本編プレイ済みの方はこれだけで僕の言いたいことがわかってしまう予感…。

僕があの娘を選んじゃったら他の娘はどうなっちゃうんでしょう問題

これはノベルゲーマーにとっては、非常に古い問題です。これはKanonの時に大いに盛り上がった話なので、その例を持って示しますが、なんていいつつもう内容を忘れつつあるので、細かいとこは気にしない方向で。
Kanonは主人公が選んだ女の子だけがある奇跡によって助かるという内容でして、選んだ女の子以外がどうなるのかは本編中では語られませんが、奇跡が起きないなら助からないはずなので、まぁ基本的は助からないはずです。わかりやすいように、「僕があの娘を選んじゃったら他の娘はどうなっちゃうんでしょう問題」と呼ぶことにします。

これはノベルゲームやアドヴェンチャーゲームなど選択のあるゲームに特徴的な問題です。なんてことのない問題なんですが、RPG圏の方にはプレイヤー(PL)とプレイヤーキャラクター(PC)の区別をもって語るのが簡単でしょう。えっとこの用語からわからない人も読むだろうか…。ゲームにおいてプレイヤーとはあなたみたいにゲームの中のキャラクターを動かす人です。プレイヤーキャラクターはその動かされている人で、ドラクエで言うと勇者です(ドラクエ5だとそうとは限らないんだけど)。

この「僕があの娘を選んじゃったら他の娘はどうなっちゃうんでしょう問題」はPCにとって問題になることはありません。なぜなら、PCは自分が選択した以外の結果を知りようがないからです。ことギャルゲーでは他の娘にもなんか事件が生じてることを知らないで終わることも多いでしょう。PLだけが選んだ選択肢以外のことを知ることができるわけで、これはむしろPLにとっての問題です。

ループものはプレイヤーが感情移入しやすい

東浩紀がCross Channel*1を例にループもの(タイムスリップなどにより、主人公の行動による部分以外は繰り返し出来事が起こる世界に閉じ込められる話)において、主人公の立場がPCに近くなり、より深い感情移入をうながすことを指摘しています。ループものでは主人公(PC)がお話を繰り返すため、自分が別の選択をしたときの結果を知ってしまうのです。この場合、主人公の体験してきたこととプレイヤーが体験してきたことは同じになります。主人公はひとつの選択をする際、いつも選択されない選択肢や、その結果を切り捨てなければなりません。この主人公の葛藤はプレイヤーの葛藤に近く、主人公に深く感情移入できると、こういう理屈です。

賽殺し編感想

ついに本作の話となりますが、本作は古手梨花の視点で話が進みます。ひぐらし解で明らかになりましたが、古手梨花は死ぬと時間が巻き戻るという性質を持っていまして、彼女にとってはこの物語はループものなのです。

今回彼女は自分以外はみんな罪を犯さず幸せになっているという世界で自分も幸せになれるよう努力をしていくのか、みんな一度罪を犯しそれを乗り越えてきた世界に戻るのか選択を迫られます。もっと簡単に言えば、たとえば自分の家族が殺されたあとの世界で、その傷をみんなの助力と自分の努力で乗り越えた世界と、自分の家族が殺されない世界どちらを選びますかという問題です。この選択の細かいルールは本作を読んでもらうしかないのですが、なかなか悩む選択です。そう悩む問題なのです。僕もプレイヤーとしてこの梨花のように何度も何度もこの物語を読んできて、罪を乗り越えてきたその努力と奇跡の価値がわかっているだけに、そしてその罪のつらさもわかっているだけに悩んでしまいます。この本文中に選択のないゲームでとんでもない選択を最後に迫ってくる竜騎士07、さすがですね。

本作では結論がだされていますが、結論自体は重要でないと思います。僕としては羽入に、この問題を提起された時点でもう終わってもいいかなぁと思ったくらいでした。そういう意味では選択の後の話がちょっとやぼったくも思いましたが、梨花がこの選択の話を仲間にするっていうところで、こいつらほんと仲いいよなぁ喜ばしい気持ちになります。


自分が選んだ世界を一生懸命生きればいい。まぁ要はそうなんですが、それは選択しなかったものを軽んじてしまっていいというわけではなく、選択せず、犠牲になった人たち、ものたちに感謝しつつ、その選び取ったものに真剣に生きればいいと、そういう結論なんだと僕は思ってます。IFを思うことでその選択により真剣になれる。それがIFの価値ですよね。ちょっと結論が良い子すぎるでしょうか?


ひぐらしはほんとにおもしろいゲームでしたね。竜騎士07の次回作はどうなるのか気になるところです。”うみねこのなく頃に”?そのタイトルほんとかいな。あと絵はそろそろ他の人にまかせたほうが…。竜騎士07の絵も嫌いじゃないんですけど、人に任せたほうが作品のクオリティはあがると思うんですけどねぇ。これだけ有名になったし、オーディションしてもいいくらいじゃないかと。

*1:Ever17と間違えてた…致命的なミスですね