独白するユニバーサル横メルカトル 平山夢明

独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル

これはダヴィンチの記事で特集されてから、いつか読もうと思っていたのですが、こんな時期に読み終わってしまいました。新年そうそうこれか…。

この本のタイトル”独白するユニバーサル横メルカトル”は一見意味不明ですが、読んでみればなるほどこりゃ〜独白するユニバーサル横メルカトルだわと納得できるもので、決して奇をてらっただけのタイトルではありませんね。

本書はその独白するユニバーサル横メルカトルを含む短編集で、他に7編の短編が収められています。

本書の特徴はやはりすごくグロい描写にあると思います。拷問のシーンなど途中で”だめだ…こりゃ想像やめ!”ってな感じで、その絵を想像するのを止めてしまったほどです。万人にお勧めできるような書ではないでしょうね。グロいのが苦手な人は想像するのを止めさえすれば、文章自体は綺麗ですので読み進められるとは思います。

しかし本書はそんなグロイ描写がテーマな、血が見たい高校生のための作品ではありません。このいかれた世界観や趣向の中で活躍する登場人物たちがわれわれ同様、またはわれわれ以上の知性や感性を輝かせる一瞬というものがありまして、なんとそんないかれた人たちに感情移入してしまうというのが本書の魔力かと存じます。

物語を起承転結に分ければ、転の部分も見事で、いい意味で見事にわれわれの予想を裏切ってくれる結末を用意している作品もあります。このミステリーがすごい、1位、2006年度日本推理作家協会賞受賞作というのは伊達ではありません*1

僕はやっぱり”独白するユニバーサル横メルカトル”の設定に非常に驚きましたし、これが一番好きですね。一番グロくないという説もあります。あとは”オペラントの肖像”も設定が好きですね。”怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男”が本短編集のラストとなりますが、僕がすっかり平山夢明節に慣れていたせいものあり、温かさまで感じてしまいました。

非常に完成度が高くなかなか読み応えのある作品だと思います。やはり、こういった描写に抵抗がある人には無理にお勧めできませんが、僕は別に後味の悪さも感じませんし(”怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男”がラストだからかもしれない)、試しに手にとってみてはいかがでしょうか。