ゲド戦記 アーシュラ・K.ル・グウィン, 清水真砂子

ゲド戦記 1 影との戦い (ソフトカバー版)

ゲド戦記 1 影との戦い (ソフトカバー版)

ゲド戦記 2 こわれた腕環 (ソフトカバー版) ゲド戦記 3 さいはての島へ (ソフトカバー版) ゲド戦記 4 帰還 (ソフトカバー版)

やばい。全部読んでから感想書こうと思ってたのに、最近全然読めてないから印象が薄れてしまう。ゲド戦記は5巻+外伝一巻で構成されます。いまのところ1巻から4巻まで読んで、次に外伝を読み出した途中です。5巻はまったく未読です。


ゲド戦記…、僕は映画を見てから原作を読んだのですが…*1、原作を読むと確かに映画はいかんですね。言おうと思うといくらでもダメ出しできます。それだけ原作が優れているのです。でももう映画版のゲド戦記を酷評するのも、時期外れですし、原作の良さを伝える方向でがんばります。


ゲド戦記は哲学的という話をよく聞きます。これはそのとおりなんですけど、あんまり難しく捉えなくてもいいかと思います。ただ、善玉が悪玉をばったばったと切り倒す、そういう活劇ではありません。虚栄心との付き合い方や、自由のつらさ、そういうことがテーマになっているというだけですね。有名なファンタジーということで指輪物語を引き合いにだしてみますが、この指輪物語は人が御しきれない大きな力を持つことをテーマにしていますよね。それはそれで重要ですけど、アメリカとソ連の冷戦が終わって核の脅威が見えにくくなった今、切迫してないテーマになっていると思います*2。一方、ゲド戦記のテーマは個人的で、いつの時代でも心に訴えかけてくるものです。ハリーポッターのテーマもそうだと思います*3

ちょっと映画に話を戻しますけど、そういったばったばったと敵を倒す、活劇でないものをアニメーションで表現するってのは非常に難しいことですね…。場面転換も少なく、ひたすら会話と心情変化が描かれている場面なんてどうやってアニメでやれっていうのでしょう。しかし原作では、この場面転換などがない、普通なら飽きてきてしまうシーンにどんどん引き込まれていく、どんどん続きが読みたくなる。そんな不思議な感覚を味わえます。まぁそういうわけでゲド戦記は小説というメディアで読むのがいいですよ。


以下は各巻の感想です。ネタバレの可能性もあるので注意。





影との戦い

ゲドの少年時代から、青年時代。けっこう派手に魔法が使われて楽しい巻です。また、影に追われるゲドの孤独がいいですね。自分の犯した罪に一人で耐えるってのがいいです。その基本的には一人で孤独な上で、カラスノエンドウの友情が嬉しいですよね。カラスノエンドウは直接は何もできないんですけど、ついてきてくれるってだけで嬉しいものです。

こわれた腕環

テナーの少女時代の話。僕が上で場面転換がないのに引き込まれるってのはこの話です。ゲドが閉じ込められているシーンはほんと動きが少ないですよね。でも、テナーが少しずつ変わっていくのがおもしろくて、一気に読んでしまいました。あと気に入ってるのはゲドに助けられたテナーが自由の苦しみを感じるシーン。これがゲド戦記の一筋縄ではいかないところですよ。

さいはての島へ

アレンとゲドのお話です。アレンとゲドが信頼を築いていくのがいいですね。

帰還

大賢人ゲドも人なんですよね〜。あんだけかっこよかったゲドが魔法が使えなくなって自信を喪失してしまう…。ゲドの人間らしさ、テナーの強さそういうものが光る一冊です。

外伝と5巻の感想はまたいつか。読み終えたら書くことにします。

*1:ゲド戦記映画感想

*2:こういう言い方は指輪物語のファンの方には怒られるかもなぁ。

*3:ハリーポッター感想