ラッシュライフ 伊坂幸太郎

ラッシュライフ (新潮文庫)

ラッシュライフ (新潮文庫)

陽気なギャングが地球を回す*1は漫画で読んでしまったので数に入れないことにすると、伊坂幸太郎の小説を読むのは二作目です。一作前のオーデュボンの祈り*2を読んだときには村上春樹っぽさが気になりましたが、本作品でもそれは感じました。もちろんこの著者独自の良さもあり、それは後述します。


村上春樹っぽいていう先入観があるので気になっているだけなのですが、例えばタイトルをコルトレーンラッシュライフlush life*3から持ってくるところなんかは、元ジャズ喫茶店主であり、ジャズの本もいっぱい書いている村上春樹っぽいですよね。ジャズって最近あんまり聞いていないのですが、僕にはどうも背の丈にあってないもののような気がしてしまいます。高校生とかくらいなら背伸びした感じがほほえましいですけど、今更そういう雰囲気のかっこよさを求めるのは逆にかっこ悪いですもんね。とはいってもビルエバンスの枯葉*4なんかは誰が聞いても楽しめると思うのでもし聞いたことがないなら聞いて欲しいですね。ちなみに作中にはキースジャレットもでてきます。まっそんなのがちょっと気になるのですが、それはかなり重箱の隅をつつくような非常に些細なことです。
音楽の話がでたのでついでに述べておきますが、作中でビートルズのHere comes the sun*5を聞いて、すこし元気になるってシーンがありますが、あの曲聴いても僕はぜんぜん元気になりませんね。もっと何もかも肯定してくれるような曲のほうが僕には説得力がありました。


そんなことより大事な特徴がたくさんあります。この作品は、複数の主人公たちの視点がまぜこぜにでてきて、絡み合いながら発展していきます。本書の最後の解説でそのように紹介されているのですが、映画のようにこうパッパッと画面と主人公が変わっていく感じを想像してください。そしてその絡み合いには高度な仕掛けがしてあって、読み終わった瞬間にきっと読み返したくなりますよ。これはほんとおもしろかったなぁ。ぜひ確認してみてください。


ところでオーデュボンの祈りにも本作にも未来が読める存在がでてきます。運命とかって決まっているのだろうか?決まっているとしたら、それを読める人はどのように振舞うのか?伊坂幸太郎にはそういった問題意識があるのかもしれませんね。


それにしてもこういった感想やレビューを書く前に解説を読んでしまうと、自分の書きたかったもやもやとした感想に綺麗な形がついてしまって、同じことを書くのは避けようとすると、書くのが難しくなってしまいますね。まぁそれはともかく、非常に良く出来た作品だと思いますので是非お読みください。

*1:

陽気なギャングが地球を回す (KCデラックス)

陽気なギャングが地球を回す (KCデラックス)

小説で読むのが面倒でつい漫画で読んでしまいました。映画化もされています。

*2:オーデュボンの祈りの感想

*3:

ラッシュ・ライフ

ラッシュ・ライフ

 僕は実はピアノのレッドガーランド好きなんです。マイファニーバレンタインのイントロかわいいですよね。

*4:

Portrait in Jazz

Portrait in Jazz

本文でも書いていますけど、これはほとんど誰が聞いても良さが分かるんじゃないですかと思います。

*5:

Abbey Road

Abbey Road