The Catcher in the Rye (キャッチャー・イン・ザ・ライ)  J.D.Salinger 村上春樹訳

この本は高校生か大学生の始めのころに
野崎訳のほうを手にとって読み始めたことがあったんだけど
つまんなくてやめてしまっていた。

これは別に村上春樹訳がいいっていうわけではなくて
単に読む時期の問題だったんだろう。
でも新書サイズの野崎訳の表紙の絵の
なんだか豚だかなんだかわからないやつ
が気に入らなかったのはよく覚えている。
ホールデン風に言えば、
「これから読もうとする本にそんなへったくそな
絵みたいなものがついていたら
まったく嫌になっちゃうじゃないか。正直な話。」
ってな感じかな。

それにこのホールデンの語ることが
非常に瑣末で要領を得ないのもなんだか惹かれなかった理由だろう。
彼の発言や行為の一つ一つになんだか
共感とかわいそうさを覚えるくらい精神に余裕がないと
この本はおもしろくないと思う。

高校生のころとかって本一つ読むのもなんだか
背伸びしてしまうところがあって、
サリンジャーなんてすごく有名だし、
とりあえずよんどかなきゃなーなんて義務感もきっとあったんだと思う。
そういう状況ではきっとこの本を読んでも
面白く感じられなかったんだろう。

それで久しぶりにこの本を手にとったのは
とりあえず村上春樹が好きだからなんだけど
海辺のカフカよりよっぽど惹かれた。
本人にとってみれば失礼な話かもしれないけど
僕はもう村上春樹の小説には期待してないところがあって、
彼の翻訳のほうがよっぽど面白いんじゃないかと思っている。

そろそろ読んだ感想を書こうと思うんだけど、
一言で言えばこの本はすごくしみた。
例のこのタイトルの由来のところあたりから正直泣きそうだった。
ヘッセの車輪の下なんかは最後がぱっとしないところがあると
思うんだけど、これは最後までどんどん盛り上がっていって
すばらしいと思う。
フィッツジェラルドの「グレートギャッツビー」とか
かっこつけて言ってみてもなんだかこの感動の前には
薄れてしまうなぁって感じた。
僕の読書歴はあるいみここから始まるのかもしれない。

                                                                                                                                                              • -