内田樹の本をいくつか

内田樹(うちだたつる)はwikipediaによると、日本の哲学研究者、思想家、倫理学者、武道家、翻訳家、神戸女学院大学名誉教授だそうで、(僕は見てないのですが)有名なブロガーでもあるそうです。

ためらいの倫理学では”ものごとのすっきり説明できなさを心に留めることの大切さ”を学ぶことができました。大学院から、物事を整然と説明する訓練(アカデミック・ライティング)ばかり受けてきた僕には非常に新鮮です。

僕の受けてきた訓練では、物事を説明するプロセスは以下のようになります。

  1. 悩んで結論を決める(ある命題を肯定するか否定するか、A説vsB説はどちらを支持するのかなどハッキリ決める)
  2. その結論に最短距離でたどり着けるような導入や論理構成を考える
  3. 最後にうまく説明できない要素を議論としてまとめる

2番目のプロセスでは1番目で考えていた小難しいことは一旦全部捨てて、自分よりも専門知識のない読者の立場になって簡単な説明を一から構成しなおします。時には結論に都合の悪いことも書かないといけないのですが、そんなときでも必ず反論をつけて、自分の主張を支持します。最後に3番目で議論を書くことも求められるため、学問の現場はフェアに運営されているのですが、紙面が足りないときや一般向けに説明するときには議論を抜かすこともあり、そこでは”簡単のため”という看板の下、公平性が失われています。

この本では、上の2のような「結論に向かって一直線に進むような価値観」や「自分の正しさを説明するうまさ」よりも、「迷いを迷いとして隠さない価値観」や「自分が起こす間違いに対する感受性」を大切にしたほうが良いのではないかということが書かれています。

紅茶さんところの掲示板で、僕と紅茶さんでうまく意見がかみ合わないときがあるのですが、もしかしたら、こうした価値観の違いにあるのかもしれません。僕が結論とそれに至る明解なロジック(悩ましい要素は全部切り捨てて最低限の知識で理解できるもの)を求めているときに、紅茶さんは膨大な背景知識から悩みつつもどうしてその結論になったのかという思考の過程そのもの(上でいう1番)を提示しようとしているのかもしれません。

話変わって戦争論では、日本の政策を4パターンに分けて説明していたのが分かりやすかったです。

以上の4つの選択肢で今の安保法案はアメリカの強い味方になる方向を選んだわけですが、本当にそちらのほうが国益に合うのか、そこを議論して欲しかったようにも思います。また単純に戦争が嫌だ、戦争そのものに反対という”気持ち”もどこかで考慮してもらえたなら、賛成、反対の両陣営にとっても乱暴な議決にはならなかったのかもしれません。

内田樹の本として以下の2冊も読みました。変わった意見なのに明解で説得力があり、引きこまれました。