まおゆう魔王勇者 橙乃ままれ, toi8

まおゆう魔王勇者 (1) 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」 まおゆう魔王勇者 (2) 忽鄰塔(クリルタイ)の陰謀 まおゆう魔王勇者 (3) 聖鍵(せいけん)遠征軍 まおゆう魔王勇者 (4) この手でできること まおゆう魔王勇者 (5) あの丘の向こうに 特装版

今日は魔王、勇者ものをいくつかレビューしようと思います。これらの作品の特徴は勧善懲悪的な世界観への疑問を通じて、社会システムの問題を取り扱うところです。このまおゆうが切り開いた地平と言えるでしょう。

もう少し噛み砕いていいます。これらの作品は魔王vs勇者の構図から始まるわけですが、これが何らかの事情で膠着状態に陥ると、自分たちの関係性を見直し始めます。元々どうして争いだしたのか考えると、問題は貧困だったり差別だったり誤解だったり、はたまた第三者の意図だったりするわけですが、これまで対立してきた二勢力がどのように協力してそれらを解決していくのかが見物となります。

このお話の構造は現代の社会を反映しているところがあって、それに読者も共感して読み進めているのだと思います。エヴァンゲリオンと比較してみるのも面白いかもしれません。あの話の大きな特徴は結局敵が誰なのかよく分からないことだと思います。それが、それまでの物語とは大きく違っているように思えます。時代の雰囲気として、何か黒幕がいるような物語よりもそうした何を倒せば良いのか、どうして良いのかわからなさが共感を呼んだのでしょう。その複雑な社会から距離をおけるのか、置いて良いのかの葛藤が「逃げちゃだめだ」という言葉に集約されているような気がします。

一方、このまおゆうは経済学という立場から戦争を相対化して、どうして良いのか分からない状態から抜けだしたというところに新しさがあります。逃げてはいけない、流されてもいけない、というところから話が出発しています。

だからどうしたという話をつらつらとしてしまいましたが、物語の構造に新しさを感じましたので、書き留めてみました。