天地明察 冲方丁
- 作者: 冲方丁
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/12/01
- メディア: 単行本
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読み終えたあと「これは正に偉業だ」という感想を抱きました。
この小説は大和暦をつくった渋川春海という人物の生涯を描いたものです。読む前は暦を作るっていうことがいまいちピンときてなかったのですが、読んだあとにはそのすごさに心震えました。
例えば今度地域によってGWが変えようという動きがあるらしいじゃないですか。祝日を変えるだけでも大騒ぎなのに、暦全体を変えることがどれだけ大変な影響を及ぼすのか考えてみてください。すごいことですよね。
そんな偉業をなしとげた渋川春海ですが、この人の人柄が良かったです。職業としては幕府お抱えの碁打ちなのですが、数学や天文に興味を持っていて熱中すると我を忘れてしまう、ほほえましい人物です。僕も多分にオタク的ともうしましょうか、そういう傾向があるのですごく親近感がありました。
春海が数学(この時代ではのちに和算として整理される算術)好きなエピソードを彩るため、いくつか実際に幾何や数列の問題が出題されるのですが、昔取った杵柄、僕も一緒になって解きながら読み進めていきました。全部で三題だされましたが、一問目はあっという間に解けまして、二問目は解けたものの春海と同じミスにはまり、三問目は数列の問題なのに方程式の問題だと勘違いして手つかずでした。三問目はちょっと微妙な問題でして、そもそも本書の解答が間違っているように思います。くわしくは、http://kiten.blog.ocn.ne.jp/kisouan/2010/04/post_2d8f.htmlを参考にしてください。僕もエクセルで確かめ同じ結論に達しています*1。
だいぶ脱線しましたが話を本筋に戻しましょう。改暦をするためのすったもんだの中で春海は様々な立場の人と出会うのですが、どの人も個性的で魅力に溢れていました。出会いもあれば分かれもある。春海はやがてそれらの人々との別れを経験しますが、これもまた涙なしでは語れないエピソードとなっており、僕は涙を拭きながら鼻をかみながら読み進めることになりました。
各所で絶賛されている通り、素晴らしい小説で、非常におススメの一冊です。
*1:とはいえ、具体的な数列を見せてそれの一般項を求める問題というのは実は解が一つに決まらないので、本書が間違ってるとも言い切れないのですけどね。例えば一般項を2次をぬいて3次や4次にすると本書の解答に近づきます。もっと複雑な関数にすればいくらでも合わせることは可能かと。また単純に誤植で5つの周の和を40寸じゃなくて80寸ぐらいにしても合いますね。あとは1次のみにして最少自乗法でフィットしても合うかもしれません。これは試してないですが。