MAMA 紅玉いづき

MAMA (電撃文庫)

MAMA (電撃文庫)

紅玉いづき電撃文庫では珍しい方向性の作家なので、大事に厳しく育てて欲しいところです。

さて、そんな紅玉いづきの二作目ですが、実は正直そんなに期待はしていませんでした。それというのも、ミミズクと夜の王に書かれた”自分のことを食べて欲しい感情”は大変印象的だったものの、僕が噂を集めた限りでは紅玉いづきは”人を食べる”の話ばかり書いていると聞いていて、『セイント(読者)に同じ技は通じないぜ!』と思っていたからでした。今回のMAMAもやはり人食いの話でしたので、変わり映えしないネタだろうと予想した次第です。

結論からいいますと、これまた一本とられました。今回も人食いの部分はそれなりに大きな意味を占めるのですが、それよりもタイトルにあるように”MAMA”、母親というのを中心に話が展開されています。男性にとって見れば、母親のことを描写するのは気恥ずかしく、あんまり正面から扱いづらいテーマですが、そこをうまく狙って独創性のある作品に仕上げています。

人に食べられたいという気持ちや、母親と子の依存関係など、ラノベにはなかなか登場しない感情を描いた本作ですが、かといって自然主義的なリアリズムで書いたほうが良いとは僕は思いません。人に食べられるということを実際に実行できるのはやはりファンタジーならではあり、母と子の感情なども、呪いや魔法という形で表現されるほうがより純化された形で伝わってきました。

紅玉いづきには、この方向性でそういった自然主義的リアリズムにて好まれるようなテーマをファンタジーを用いてより純粋に描いていって欲しいと思います。