アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫 川原礫

アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫 (電撃文庫)

アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫 (電撃文庫)

アクセル・ワールドは現実にも影響を及ぼす奇妙なMMOを舞台にした小説です。

小説の主人公というのは、読者の願望を投影しやすいよう比較的美形に描かれることが多いかと思いますが、本作では肥満児が主人公となっており、なかなか珍しい設定と言えるでしょう。しかし、MMOという仮想現実の世界と現実世界のギャップを描くという意味ではこの設定は非常に意味深く、ただ奇抜なだけではありません

さて2巻でも主人公たちの戦いは続きますが、僕はMMO独自の倫理観がおもしろいと思いました。言うまでもないことですが、現実世界と仮想現実世界の倫理観は違います。たとえばストリートファイターなどの対戦格闘ゲームでは”強さこそ正義”であり、話し合いの余地はありません。これは現実世界で強調される”暴力反対”と真逆の倫理観です。

”強さこそ正義”という倫理観は現実世界から見るとゆがんだものに思えますが、ゲームの世界では誰もがその価値観に納得して参加しているわけで、その価値観に異議をとなえることは”野暮”でしょう。

この弱肉強食な倫理観こそがそのゲームの中では正しいと信じるゲーマー精神の持ち主たちが、日和見な世界に挑戦する形式になっていることがこのアクセルワールドの新しさ・独特な点だと思います*1

*1:スラム・オンラインなんかが似たようなテーマを取り扱ってるかもしれません。

スラムオンライン (ハヤカワ文庫 JA (800))

スラムオンライン (ハヤカワ文庫 JA (800))