されど罪人は竜と踊る 1-4 浅井ラボ  宮城

されど罪人は竜と踊る 1 ~Dances with the Dragons~ (ガガガ文庫) されど罪人は竜と踊る 2 ~Ash to Wish~ (ガガガ文庫) されど罪人は竜と踊る 3~Silverdawn Goldendusk~ (ガガガ文庫) されど罪人は竜と踊る 4 (ガガガ文庫)

浅井ラボ、浅井研究室、その名の通り衒学的な薀蓄満載でお送りするのがこのされど罪人は竜と踊るです。

ファンタジックな魔法の効果を物理・化学・生物の言葉で説明するのが本書の一つの売りですね。一般教養レベルの理系な知識があるとわりと楽しめます。例えば爆薬がトリニトロトルエンでできているとか*1神経ガスって何なのかとか。この狙いはなかなか良くて、他の小説などで効果のほどがあんまり良く分からない魔法の効果がけっこう想像できます。ファンタジーでは大事なことでしょう。でも、この科学の薀蓄がたまに間違っているのであんまり信用しすぎてもいけません。僕は2つぐらい発見しましたよ。熱量の計算とかするともっといっぱい間違いが見つかるかもw 空想科学読本ガンバレって感じです。

本シリーズのもう一つの魅力は経済でしょうかね。王道ファンタジーでは誰か悪者がいて世界征服したりしちゃったりするわけですけど、本書の扱う紛争とか争いは経済など国家間の陰謀劇から生じていてなかなか分かりやすい黒幕がいません。悪を書くのが難しいという現実と本書の内容はあっていると思います。

さてイラストレーター宮城のアートワークの素晴らしさにも触れなくてはなりません。僕は1巻のころはガユスの視点に共感しながら読んでいたのでギギナは変人でしょうもないという印象だったのですが、巻を追うにつれ、ギギナのマイペースに癒されてしまいました。話が複雑すぎて、もうめんどくさいから怪しいやつは全員斬って捨てようぜ!って気分の時にギギナの台詞と行動に和みます。家具が好きなところも良い趣味ですね!そんなギギナの美しさはこの宮城のイラストあってのものでしょう。

特にネットの評判とか気にせず、旧スニーカー文庫版も知らず、単にガガガで手に取っただけのシリーズでしたが、大変楽しめました。

*1:最初ダイナマイトがTNTから出来てるって書いちゃいましたけど、それは間違いwダイナマイトはニトログリセリンからですね。失礼