TRPGによるソーシャルスキルの獲得

今日の話はちと長いので、目次を先に示します。

  1. TRPGにおける会話の重要性を見直す
  2. 学習障害の解決を支援する試みとして、ソーシャルスキルの訓練のサイトを紹介
  3. そこでの訓練的な遊びよりも大人も素で熱中しているTRPGのほうが楽しいので子供の食いつきがよいのではないかと提案
  4. 最後に実際に子供と遊んだというレポート記事を紹介。

会話を中心としたTRPG

TRPGとはテーブルトークロールプレイングゲームの略なわけですが、TRPGにおける会話の役割とは何なのかそんな疑問が頭をもたげました。このあたりあまりに基本的なことすぎて、みなさん考えてないような気がします。例えばhttp://www.scoopsrpg.com/contents/hakkadoh/hakkadoh_20070927.htmlでは会話とはあくまでゲームトークンを操作する手段という認識で独立の項目としては説明されていません。

最近、おもしろく思った記事に序論:ゲームとは何か コスティキャンのゲーム論を越えて - 未来私考というものがあるのですが、ここでは単にサッカーボールを蹴るといったようなシンプルな娯楽の核にゲーム要素を付け加えることで奥深さと飽きにくさを与え、サッカーが出来上がっているのではないかと主張しています。

これをTRPGに援用すると、TRPGとは人と会話するという娯楽の核に、ゲーム要素を加えたものであるという認識になりますが、こういったTRPG観もなかなか面白いのではないでしょうか。実は紅茶さんはけっこう前から雑談に着目しているのですけど、紅茶さんは口調がアレだし結論はこれですという形式で物を書かないから引用しづらく、話が埋もれてしまっていますね*1 *2

ソーシャルスキル

ここから先が本論です。前置きが長くて申し訳ない。前節に書いた問題意識で会話とゲームの関係について調べていたら、面白いサイトを見つけました。

このサイトは近年学級崩壊などで叫ばれる学力低下の問題を軽度な発達障害として捉え、それをソーシャルスキルを磨く遊びやトレーニングを通して支援していこうという意図で作成されています。ここで問題にされている学習障害を抱えている子供の特徴は以下のようなものだそうです。

  1. 集団場面で聞き取りができない場合がある
  2. 会話が発展しない場合がある
  3. 立場や状況に合わせた行動が苦手な場合がある
  4. 遊びのルールをうまく理解できない場合がある
  5. 道筋をたてて話すのが苦手な場合がある
  6. 道に迷ってしまう場合がある
  7. 視覚的手がかりがうまく使えない場合がある
  8. 作文ができないので、手紙など苦手な場合がある

楽しく体験!ソーシャルスキル

どうでしょう。TRPGで遊んだことがあるみなさんは、TRPGってこの問題を解決するためのトレーニングにものすごく向いていると思いませんでしたか。TRPGを知らない方がもしこの記事を読んでいるのでしたら、こちらで、TRPGとはどういう遊びなのか確認してください。玄兎さんがTRPGを学校の先生に説明する話です。

さて、このサイトで紹介されている遊びには以下のようなものがあります。

リンク 内容
紹介すごろく←音がでるので注意。 すごろくで進みながらとまったマスに書かれていることをするゲーム。書かれていることは二人の会話を促すもの。
サイコロで話そう←音がでるので注意 フジテレビごきげんようのサイコロトーク。サイコロをふって出た目に応じた話題で会話する。
こんなときどうする 演者が動いた様子を子供見せて、そんなときにどうするか子供に尋ねる。

こういうのもいいとは思うのですが、子供の立場になって考えたときあんまり面白そうに見えないのが弱点だと思います。こういうことをやるくらいなら、TRPGで本当に遊んでしまったほうがよいのではないでしょうか。ただし、上では視覚的情報を使うことが強調されているのに対し、TRPGでは通常視覚的情報は重視されないので多少の変更は必要でしょうね。

子供と遊んだ実例

さて、TRPGという遊びを子供がどれだけ楽しくやっているのか示すために三つの記事を紹介します。どの記事も子供が楽しそうに遊んでいる様子が浮かんできますね。

リンク 内容
ローン最強化計画 ゆうやけこやけというゲームを使ってます。絵日記を描いてもらったというのが非常になごみますね。
http://blog.talerpg.net/rpg/archives/1258 上にもでてきた玄兎さんが子供に頼まれてTVアニメ、ソウルイーターのゲームを作ってみようかと試みるお話です。
こどもとTRPG-1 - 蒼き月の囁き 小学校低学年の自分の子供とその友達と遠出した帰りに、電車の中でしたちょっとした冒険のお話です。


この3つはアマチュアのプレイレポートですが、実際に書籍として発売されているものではご近所メルヒェンRPG ピーカーブー (Role&Roll Books)というものもあります。本書は前半が詳細なプレイレポートになっています。遊んでいる人がちょっと大人げないので教育上良くない発言があったりしますが、まぁそのおかげで子供と打ち解けることができているので、あまり目くじらを立てないでいただけるとありがたいです。後半はルールの説明がされています。

まとめ

DSの脳トレなどでゲームは脳や子供に悪い影響を与えるという印象は払拭されつつありますが、まだまだ偏見もあります。そんな中、実はゲームが子供によい影響を与えることもあるのではないかという趣旨でTRPGを紹介しました。

追記:ブクマコメントへ

興味深い意見をいくつかいただいたので追記します。

kns:ふーむ。列挙された問題を解決するのに「会話」というより、TRPGの「物語をつくる(アウトプット・クリエイティブ)」や「行動の決定する(リアクション・ディシジョン)」が効果があるように見える・・・

一理あると思います。でも社会的な技能の訓練という意味では会話で行うことが重要かと。

Thsc:うーむ。TRPGって会話より相当難しいはず。意外にも、多くの人は頭の中で物語が勝手に動いてくれないらしい。/お話作りが好きな子供は別にTRPGを必要としないので、TRPGの側が子供を必要としているんでは?

ここは認識が逆で、文脈も空気もわからない一般の会話より、状況と場面が決定されているTRPGのほうが会話しやすいという立場です。ごっこ遊びを通してコミニケーションスキルがあがったという報告はあるみたいですよ。二つ目の例はちょっと心配な例ですが…。

確かにTRPGのほうで子供を必要としてるという事情もあります。プレイヤーが全体的に高齢化しているのは世代交代という意味では問題ですし、子供に遊んでもらえないゲームってまずいですよね。

rAdio: 「ボードゲームをやれ」(北方メソッド)

ごもっとも。実はTRPGよりボードゲームのほうがこの種のことは盛んですね。まとまったサイトを以前見かけたのですが、今見つけられませんでした。

TRPGは教材としてはおてて絵本の延長線上にありますね。判定のルールがあるのが一番の違いでしょうか。