ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。 朱門優

著者はpropeller所属。propellerといえば僕の大好きな書き手である荒川工が代表を勤めている…と書こうと思って調べたら2月に退社してた!わふ〜!ラノベ者は”にこは神様に○される?”しか知らないかもしれませんが、彼が作ってきたノベルゲーム達は一風変わった味がありまして、ギャルゲ史に残るものばかりです。フリーになってもがんばって!

まぁそんなこんなで荒川工買いに近い形で朱門優買いをしてしまいましたが、内容のほうは惜しい感じでした。

テーマはいいんですけど、なんだかぎこちないですね。著者がやりたかったこととプロットの折り合いが悪いような。家族がどーのこーの言い出すわりには描写や回想が薄いので、もっといちことアネモイとの関係に特化したほうがよかったのではないでしょうか。主人公の抱える状況の拗れも家族とのものではなくて、いちことのトラブルにしておけば話が閉じますし。また、なんだか妙にキャラの立った盗賊王の娘が何の意味もなくでてきたりとどうにも首をかしげてしまう展開もありました。

そうそう、あとテーマはいいんですけど、過去賛美になっているのがちょっと気になるといえば気になります。幼かった日の向こう見ずな勇気や心意気を賛美するのはいいんですけど、心を殺してつらい日常に耐えてきたのは間違いだったとでも言うのでしょうか。過去を賛美するのはいいんですが、現在とのバランスなども考えて掘り下げて欲しかったです。ゼロ年代の想像力ではないですが、子供時代のことばかりが賛美されるテーマが繰り返されるのはそろそろ限界がくる…というか限界を超えているのでは?

タイトルもいいし、テーマやアイデアも素晴らしかっただけに、最終的な形が少々いびつになったのが残念です。