うみねこのなく頃に

うみねこのなく頃に


僕はひぐらしのなく頃にからのファンで、今回もとても楽しみにしています。発売日に買ったんですが、ちょこちょこやっていたので、終わるのが今日になってしまいました。

同人作品なのでISBNから書影がでないのですが、とらのあなの通販サイトからジャケットを拝借しました(右上)。

今回は、お話自体は孤島ミステリですね。伝奇的な要素が入ってます。僕は詳しくないのでとっさに例がうかびませんが、これだけならわりとあるのではないでしょうか。

では、今回のうみねこのなく頃にの新しさとはなんなのでしょう。僕は読者への挑戦の仕方だと思っています。

ひぐらしのなく頃にの復習 TRPGとの関係

前作、”ひぐらしのなく頃に”の新しさはミステリを拡張したような新しい”読者への挑戦”を提案したところにありました。”犯人、動機、殺害方法を解明するゲーム”がミステリだとするなら、”ひぐらしのなく頃に”は、”物語の背景を支配するルールを解明するゲーム”です。このことはひぐらしのなく頃に解にてより明確に示されます。

ちょっと話が逸れますけどTRPG者でひぐらしのなく頃にを評価している人は多いと思います。TRPGは”物理法則が現実と違う世界での問題解決”とも見ることができますが、そのとき大事になってくるのは、その世界を支配する法則を理解することですよね。
”現実とは違う”っていう部分は物理法則を思い浮かべるならファンタジーになりますけど、それだけに限った話ではありません。生活の仕方や人々の思想も現実と違うなら、問題解決の方法も違ってくるはずです。

通常の読書でももちろん物語の世界観を理解することは大事だと思います。しかしひぐらしが”自分だったらどうするのか?”、”主人公はどうすればよかったのか?”を明確に考えさせる形式であるという意味では、これは非常にTRPGと親和性のあるゲームであるということができますね。主人公の物語を読むのではなく、自発的に動かすにはどうしてもルールの理解が必要になるのです。

うみねこの新しさ

うみねこのなく頃にの新しさもまた、読者への挑戦にありそうです。オフィシャルサイトからすこし引用しましょう。

皆さんは、どんな不思議な出来事が起こっても、全て“人間とトリック”で説明し、
一切の神秘を否定する、最悪な人間至上主義者共です。

どうぞ、六軒島で起こる不可解な事件の数々を、存分に“人間とトリック”で説明してください。
(中略)

私が期待するのは、正解に至る推理が現れることじゃない。

一体何人が最後まで、魔女の存在を否定して、“犯人人間説”を維持できるのか。

つまりこれは、魔女と人間の戦いの物語なのです。
「うみねこのなく頃に」作品紹介から引用

うみねこのなく頃にもやはり、”物語の背景世界を理解するゲーム”だと思っています。
この世界は、魔法が存在する世界なのか、魔法なんてない世界なのか。

だた、このゲームは単に”物理法則”を理解するゲームではないと思います。うまく言葉にできているかどうか不安なのですが、ある物理法則を認める認めないというよりもっと難しい部分を問うているんだと感じています。

今回、魔法を信じるということは、親や大事な人を無残に殺す魔女を信用するということも意味します。犯人の思うがままになるのかいなかとか、自分が今まで信じてきたものが信じられるかとか…。そこが問題になるのかと。

本作は人の信念に関する物語で、読者の信念さえもゆさぶってくるという意味で新しい作品だと感じました。ちょっとうまく言葉にできているのか自信がないですが。

微妙なところ

前節に書いたような読み方をすればおもしろい作品なのですが、他の読み方をするとつまらない作品に読めてしまうかもしれません。そのあたりの注意を。

ミステリとして

物理トリックを推理できるほど、部屋の構造などが詳しく書かれているわけではないですね。一応模式図などもでてきているのですが、ほんとに今の情報だけで推理して答えがでるかどうかは微妙だと思いました。

行動時間の描写はかなり具体的なので、そこは信用できそうですが。

小説として

真理亞の性格の描写などにさすがに無理があるような気がしますし、戦人も、あまりにわざとらしい台詞が多いですね。うまい小説としての魅力もまた、他の作品にはおとるかもしれません。

こまごまとしたこと

今回は、ムービーとか演出とかがひぐらしよりパワーアップしてますね。ひぐらしに引き続き、音楽もいいです。素晴らしい。

まとめ

欠点のある作品だと思いますが、やはり目の付け所が新しく、非常に期待できる作品だと思います。次回作も当然買います!