"文学少女”と飢え渇く幽霊 野村美月, 竹岡美穂
- 作者: 野村美月,竹岡美穂
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2006/08/30
- メディア: 文庫
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文学少女シリーズの2作目です。前作は大変楽しませてもらいました*1。そのため、文学少女シリーズは4作目までそろえてはあるのですが、今回の元ネタとなるエミリー・ブロンテの”嵐が丘”を読んでいないため、本作を読むのを躊躇していました。
今回の事件と引用のバランス
今回目についたのは実際の事件と引用のバランスの悪さです。
読んでないので分かりませんが、嵐が丘はヒースクリフ及びキャサリンを主に展開されているのではないかと思います。今回の語り手、井上心葉は本作におけるヒースクリフやキャサリンとずいぶん遠い関係にあり、彼らの素性が見えてきません。
特にヒースクリフに関する情報は全く間接的なものに限られるため、彼の心情を把握するためには、嵐が丘の原作を引用しなければなりませんでした。ヒースクリフの心情なんていうおいしいところを引用に頼らねばならなかったのはなかなか問題です。オマージュ作品としては意味がありますけど、なるべく今回の事件において、それが見えるように書いて欲しかったですね。
本作が成り立っているのは、太字で書かれている井上心葉視点ではないところによることがあまりに大きすぎるかと。ヒースクリフとキャサリンの激しい感情に対して、遠子先輩も心葉もそれに対抗できるだけの、なにかをもってこれていないので、始終傍観者に終わります。
井上・遠子モードとヒースクリフ・キャサリンモードで話や雰囲気が分離しすぎていて、違和感を覚えました。簡単に言えば、すごく内面が複雑で狂おしいまでの感情表現のあとに、典型的なキャラクター表現がきてる…こういうことを想像してもらえればこの違和感が伝わりやすいかもしれません。
純文学をライトノベルの元ネタとする以上避けられない問題ではあるので、なんとかうまく解決して欲しいですね。次作に期待です!(もう買ってあるが)